東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

薄黄色の表紙に丸や点線の模様

書籍名

コロナ禍と日本の教育 行政・学校・家庭生活の社会学的分析

著者名

中村 高康、 苅谷 剛彦 (編)

判型など

274ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年4月28日

ISBN コード

978-4-13-051368-5

出版社

東京大学出版会

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コロナ禍と日本の教育

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本書は、コロナ禍において日本の教育現場や行政および個々の児童生徒や家庭がどのような状況にあったのかを、全国調査データによって明らかにしようとする実証的研究の成果です。
 
2020年に突如として始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちの社会を大きく変容させるとともに、既存の社会システムの脆弱さや問題点を浮き彫りにすることにもなりました。この未曽有の状況でいったい何が起こっていたのかということを、私たちは将来に向けて記録に残しておく必要があると考えました。そこで文部科学省の委託調査研究に応募し、採択された浜銀総合研究所のプロジェクトに乗る形で、調査を実施しました。調査は、2020年度と2021年度の2度、教育委員会・小中学校およびその児童生徒・保護者を対象に行われました。2年分の回答が組織単位・個人単位で紐づいたいわゆるパネル調査の形式をとることで、よりリアルな実態に迫るデータを作ることを目指しました。
 
研究に参加したのは、本書の編者である中村・苅谷のほか、この問題に関心を持つ教育社会学の中堅・若手の研究者たちです。一刻も早く実施する必要がある緊急調査であったため、研究打ち合わせは頻繁かつ長時間におよび、時には深夜の11時を過ぎることもありました。かなり無理をする形にはなりましたが、研究メンバーが調査の意義を理解して積極的に参加してくれたことが大きかったと思います。また、委託調査の形式であったこともあり、文部科学省も非常に協力的で、既存の政府データの利用などについてもアドバイスをいただくなど、行政との連携という意味でも良い前例を残せたのではないかと思います。
 
こうして集められたデータを様々な角度から分析してみると、調査をする前に持っていた仮説的イメージとずれていたり、逆の関係になっていたりなど、多様な実態が明らかになりました。詳細は本書の各章の分析を見ていただきたいと思いますが、いずれにしてもこうしたデータを蓄積していくことの重要性は論をまたないと思われます。この調査データは、もちろん現代日本の社会と教育の在り方を考察するうえでも貴重なものとなっていますが、そうした研究上の意義だけではなく様々な行政担当者や学校関係者の参考資料となり、未来の社会が経験するかもしれない危機が生じたときに役立つことがあることを願っております。
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 中村 高康 / 2025)

本の目次

序章 コロナ禍での共同教育調査――意義と概要(中村高康)
 
I コロナ禍での学習・ICT
1章 休校期間中の小学校でICT家庭学習課題を可能にした条件――地域や教育委員会の状況に注目して(香川めい)
2章 学校設備の格差が授業実践に与える影響――「GIGAスクール構想」本格化前の端末整備状況に着目して(池田大輝・瀬戸健太郎)
3章 コロナ禍における教育格差――学力・学習時間・ICT活用・「主体的・対話的で深い学び」(松岡亮二)
4章 コロナ禍における生徒たちの学習習慣格差――地域や教育委員会の状況に着目して(相澤真一)
 
II コロナ禍と学校生活
5章 コロナ禍での部活動の実施状況と生徒の意識――中学生にとって部活動の中止・縮小は残念だったのか(山口哲司)
6章 学校行事が学校への満足度と帰属意識にもたらす影響――コロナ禍にともなう行事中止というイベントに着目して(田垣内義浩)
7章 コロナ禍における学校現場の多忙化(多喜弘文)
8章 コロナ禍における児童生徒の学校適応/不適応に関する分析――授業適応感と登校忌避意識に着目して(有海拓巳)
 
III コロナ禍・家庭・教育
9章 コロナ禍における児童の過ごし方ときょうだいの影響(戸髙南帆)
10章 父親の在宅勤務は学習状況の格差を拡大するか――小中学生と保護者に対するパネル調査から(鎌田健太郎)
11章 災禍時における家庭の教育的文化活動とその変化――コロナ警戒度及び社会階層に注目して(中村高康)
 
終章 コロナ禍から見えた日本の教育(苅谷剛彦)
 

関連情報

新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究 (文部科学省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/index_00023.html
 
書評:
「注目の一冊」掲載 (『月刊先端教育』 2025年8月号)
https://www.sentankyo.jp/archives/202508
 
関連記事:
松岡亮二(龍谷大学社会学部准教授)「コロナ禍前後で学力に変化は見られたか?」 (中央公論.jp 2024年9月20日)
https://chuokoron.jp/society/125643_2.html
 
コロナ禍の教育調査とEIPM:行政と研究者の相互学習によるエビデンス形成
中村 高康, 苅谷 剛彦, 多喜 弘文, 有海 拓巳 (『教育社会学研究』112巻 2023年8月10日)
https://doi.org/10.11151/eds.112.5

「コロナ禍で教育格差拡大」は本当か? 「親の収入」だけでない格差の根本原因とは (『AERA』DIGITAL 2022年3月16日)
https://dot.asahi.com/articles/-/41631?page=1
 
親の学歴格差、コロナで子へ連鎖する「理不尽」 学校で必要なケアは (『朝日新聞』 2022年3月10日)
https://www.asahi.com/articles/ASQ3962ZNQ38UTIL04Y.html
 
#経済を見る眼
踏み込んだ行政対応と調査の専門知 コロナ禍の教育への影響を捉える (『東洋経済』オンライン 2022年2月18日)
https://toyokeizai.net/articles/-/576865
 
Kids of single moms, non-graduates disadvantaged in Japan's COVID school closure: study (『The Mainichi』 2022年1月25日)
https://mainichi.jp/english/articles/20220125/p2a/00m/0na/014000c
 
長期休校中の教育格差拡大をデータで裏付け 中教審に報告 (『教育新聞』 2022年1月14日)
https://www.kyobun.co.jp/article/20220114-06
 
特集 新型コロナウイルス問題の数理・計量社会学
コロナ禍のもとで学校が直面した課題:
文部科学省委託調査の概要と小中学校調査の基礎分析
多喜 弘文, 中村 高康, 香川 めい, 松岡 亮二, 相澤 真一, 有海 拓巳, 苅谷 剛彦 (『理論と方法』36巻2号p.226-243 2021年
https://doi.org/10.11218/ojjams.36.226
 
休校時の教育委員会対応、地域や保護者の階層差が影響 (『ReseEd』 2021年9月6日)
https://reseed.resemom.jp/article/2021/09/06/2225.html
 
コロナ休校中の教育支援 住民の学歴で教委の対応に差 (『朝日新聞』 2021年7月9日)
https://www.asahi.com/articles/ASP7905W2P77UTIL06B.html
 
 

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