
書籍名
ODAの国際政治経済学 戦後日本外交と対外援助 1952-2022
判型など
348ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2024年12月10日
ISBN コード
978-4-8051-1330-1
出版社
千倉書房
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
日本の政府開発援助 (ODA) は、戦後の賠償から始まりました。1954年のコロンボ・プラン加盟をきっかけに、東南アジアへの技術協力や円借款が本格化し、日本は「援助する国」として国際社会に再登場します。その後の高度経済成長を背景に、ODAは拡大を続け、1980年代から90年代には世界一の援助大国となりました。日本のODAは国際社会から常に注目を浴び、同時に「商業主義的だ」「国益優先だ」といった批判も受けてきました。
では、実際の日本のODAはどのような特徴を持ち、どんな目的で分配されてきたのでしょうか。本書はその問いに挑みます。戦後70年のODAの歩みを、歴史資料の分析、統計データの計量分析、政策文書のテキスト分析という多角的な手法で検証し、従来のイメージを再検討していきます。
援助には二つの顔があります。ひとつは途上国の貧困削減や経済成長を支える「利他主義的な顔」、もうひとつは援助国自身の外交的・経済的利益を追求する「利己主義的な顔」です。日本のODAはしばしば後者と結びつけられてきましたが、国際比較すると必ずしも特異な存在ではなく、スウェーデンのような「人道主義型」とも、アメリカのような「安全保障型」とも異なる独自のバランスを保ってきたことが明らかになります。また、アジア優先という特徴も日本の援助の特徴として言われてきましたが、地理的に近い途上国に援助を分配することは特段日本に限ったことではないことも、国際比較によって本書は明らかにします。
さらに本書が強調するのは、政策担当者の意図と実際の援助分配がしばしば食い違ってきたという事実です。たとえば資源確保を掲げた援助が思惑通りに機能しなかったり、外交上のスローガンが実際の援助配分に必ずしも反映されなかったりする場面が数多く存在しました。そこには、国内政治、国際環境、そしてレシピエント国の事情が複雑に絡み合うダイナミズムがあります。
本書は、戦後賠償から始まり、福田ドクトリン、対中ODA、ODA大綱の策定、国益との結びつき、そして近年の中国との援助競争に至るまで、70年に及ぶ戦後日本外交の軌跡を、ODAを通して描き出します。援助は単なる慈善ではなく、国際政治を動かす重要な道具であり、日本が国際社会で果たしてきた役割を知る手がかりとなるのです。外交史と統計分析を往復しながら描かれる70年のドラマは、専門家だけでなく、国際関係や現代史に関心を持つ一般の読者にも、新鮮な発見を与えることでしょう。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 保城 広至 / 2025)
本の目次
はじめに
1 政府開発援助の二つの顔
2 国際比較から見る日本型ODA
3 本書の構成
第1章 コロンボ・プラン加盟と円借款の開始――政府開発援助の起源(1)
はじめに
1 1950年代の「ODA」再考
2 コロンボ・プラン加盟と技術協力
3 インドへの円借款開始
まとめ
第2章 戦後賠償とその輸出効果――政府開発援助の起源(2)
はじめに
1 戦後賠償の国際政治的起源
2 賠償交渉の行方 1951-1963
3 準賠償と日本外交
4 韓国への「経済協力」
5 その他の国に対する経済協力
6 賠償交渉と賠償額についての総括
7 賠償の先兵効果再考
まとめ
第3章 多国間援助枠組みへの参加――1960年代
はじめに
1 国内援助組織の制度化
2 DAG/DACへの加盟
2 アジア開発銀行(ADB)への参画
3 東南アジア開発閣僚会議の開催
まとめ
第4章 福田ドクトリン論再考
はじめに
1 1970年代日本のODA改革
2 「福田ドクトリン」論
3 福田ドクトリン出現の背景
4 ASEAN首脳会議への日本の参加問題と対日要求
5 日本政府内の政策過程
6 福田ドクトリンの発表
7 福田ドクトリンの評価とその後
まとめ
第5章 対中ODAの開始
はじめに
1 中国の外資導入開始
2 対中円借款三原則
3 対中円借款と賠償問題
まとめ
第6章 経済安全保障・お土産外交・外圧反応型援助
はじめに
1 経済安全保障とODA
2 お土産外交の虚実
3 外圧とODA分配
まとめ
第7章 政府開発援助大綱の30年――日本の援助政策は変わったのか?
はじめに
1 ODA大綱と日本の援助分配行動研究
2 三つのODA大綱の背景と政策立案プロセス
3 ODA大綱内容の理論的検討
4 ODA大綱は日本の援助分配行動を変えたのか?
まとめ
第8章 国益と援助
はじめに
1 国益と対外援助――理論的考察
2 対外援助政策における「国益」言説の抽出方法と結果
3 日本の援助と国益の表出(第一フェーズ)――1970~90年代
4 対中国感情の悪化とイラク復興援助に対する国益論(第二フェーズ)――2000年代
5 インフラシステム輸出戦略と国益(第三フェーズ)――2010年代
まとめ
第9章 日中の援助競争とその帰結
はじめに
1 アジアにおける援助競争
2 援助協調行動の理論的検討
3 アジアにおける日中援助分配の分業状況――実証分析結果
4 なぜ借款援助において分業が生じるのか?
まとめ
終章 戦後日本による対外援助政策のダイナミズムとその未来
1 国益と援助――歴史的概観
2 展望
あとがき
関連情報
新刊著者訪問 第47回 (東京大学 社会科学研究所 2025年3月3日)
https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/interview/publishment/hoshiro_2025_03.html
書評:
Raymond Yamamoto (オーフス大学准教授) 評 (『Social Science Japan Journal』Volume 28, Issue 28, Summer 2025 2025年9月18日)
https://doi.org/10.1093/ssjj/jyaf033
社会貢献:
公益財団法人鹿島学術振興財団 第46回研究発表会
国益と政府開発援助(ODA):「質の高いインフラストラクチャー」と日中の援助競争
東京大学 社会科学研究所 保城広至 教授 (公益財団法人鹿島学術振興財団 2023年11月8日)
https://www.kajima.co.jp/sustainability/social_topics/contents/topics_2023_24.html
関連記事:
ODAによる国益追求 マクロ効果は限定的 保城広至氏 (『日本経済新聞』 2024年10月29日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD177ZN0X11C24A0000000/
Japan’s Foreign Aid Policy: Has It Changed? Thirty Years of ODA Charters (『Social Science Japan Journal』Volume 25, Issue 2, Summer 2022, Pages 297–330 2022年6月30日)
https://doi.org/10.1093/ssjj/jyac010
Do diplomatic visits promote official development aid? Evidence from Japan (『Political Science』Volume 72, Issue 3, pages 207-227 2021年8月23日)
https://doi.org/10.1080/00323187.2021.1948344

書籍検索



