急速な社会のデジタル化の進行の中で、仕事や研究の場でデータの存在とその活用への期待が一層顕在化してきています。その中で、データを扱う基本的な能力として、目的に応じてデータを収集分析し、その結果を正しく解釈して課題解決につなげる技術と思考力が求められています。
一般社団法人日本統計学会と一般財団法人統計質保証推進協会では、「統計検定」の枠組みの中で、データサイエンス教育の国内外のガイドラインやモデルカリキュラムと、さらには学習指導要領に沿ったデータサイエンス人材の質評価の認定を行うため、「データサイエンス基礎」、「データサイエンス発展」(以下「DS発展」)、「データサイエンスエキスパート」(以下「DSエキスパート」) の3水準の試験を実施しています。
DSエキスパートは、DS発展に続き、データサイエンスに関する大学専門レベルでの高度な内容について、CBT方式で評価・認証する試験です。試験内容は、数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムの『スキルセット及び学修目標第2次報告』および、モデルカリキュラム (応用基礎レベル) に準拠しており、データサイエンスに関する専門的なスキルを客観的に評価します。専門性としては、統計、数学、計算、モデリングについて正確な知識を有するとともに、実際の課題解決においてそれらの知識を組み合わせて適用する統合的な能力を有することが求められます。DSエキスパートはこのような統合的な能力を評価するように設計されており、出題形式は4問の小問からなる9問の大問形式となっています。
本書は、DSエキスパートの出題範囲に合わせて作成された公式テキストです。数理、情報、統計に関する専門知識を実践的に組み合わせて活用するという観点から、多様な例題を中心に構成されており、例題を解き、解説を理解することで、試験への準備を効果的に進めることができます。具体的には、本書は7つの章と付録で構成されています。まず、2章から5章では基礎的項目が説明されています。6章では、それぞれ例題とその正解、および正解にたどり着く道筋が解説されています。7章には模擬試験問題があり、DSエキスパートと同様の出題傾向、問題数も本番と同じ形式の模擬問題を解きながら、試験対策を行うことができるようになっています。
本書を修得することで、データサイエンティストに不可欠な幅広い知識や倫理的視点、さらにそれらを統合して実践に活かす能力をほぼ網羅的にマスターできます。そのため本書は、DSエキスパート試験の備えのみならず、社会で真に活躍するエキスパート人材としての成長を支える一助となるはずです。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 / 数理・情報教育研究センター 教授 河合 玲一郎 / 2025)
本の目次
§1.1 試験の主旨と本書の構成
§1.2 試験の形式
第I部
第2章 統計基礎
§2.1 確率と確率分布
§2.2 推測統計
§2.3 ベイズ理論
§2.4 計算統計
第3章 数学基礎
§3.1 線形代数
§3.2 微積分
§3.3 最適化
第4章 計算基礎
§4.1 コンピュータの構成
§4.2 データ収集
§4.3 データ表現とデータ構造
§4.4 データベース
§4.5 アルゴリズムとプログラミング
第5章 モデリング・AIと評価
§5.1 モデリング・AI による課題解決
§5.2 教師あり学習
§5.3 教師なし学習
§5.4 その他の学習
§5.5 時系列解析
§5.6 生存時間解析
§5.7 質的データ解析
§5.8 テキストデータ解析
§5.9 モデルの評価
§5.10 因果推論
§5.11 深層学習・ニューラルネットワーク
§5.12 AIとロボット
§5.13 AIの構築・運用
第II部
第6章 例題と解説
§6.1 統計基礎に関連する例題
§6.2 数学基礎に関連する例題
§6.3 計算基礎に関連する例題
§6.4 モデリング・AIと評価に関連する例題
§6.5 複合問題
第7章 模擬試験問題
§7.1 問題
§7.2 正解と解説
A.付録
§A.1 DSエキスパートの画面例
§A.2 F分布表
参考文献
著者、編集者
今泉允聡 (東京大学総合文化研究科 准教授)
岩崎 学 (順天堂大学健康データサイエンス学部 特任教授)
梅津高朗 (滋賀大学大学院データサイエンス研究科 准教授)
岡村 寛 (横浜市立大学大学院データサイエンス研究科 教授)
尾﨑順一 (横浜市立大学大学院データサイエンス研究科 准教授)
河合玲一郎 (東京大学数理・情報教育研究センター 教授 [編集委員])
菅由紀子 (株式会社Rejoui代表取締役)
佐藤彰洋 (横浜市立大学大学院データサイエンス研究科 教授 [編集委員])
志田洋平 (筑波大学システム情報系 助教)
高野 渉 (大阪大学・数理・データ科学教育研究センター 特任教授)
瀧川一学 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
竹村彰通 (滋賀大学 学長 [編集委員長])
田中琢真 (滋賀大学大学院データサイエンス研究科 教授)
林 和則 (京都大学国際高等教育院 教授)
原 尚幸 (京都大学国際高等教育院 教授)
姫野哲人 (滋賀大学大学院データサイエンス研究科 准教授)
藤田慎也 (横浜市立大学データサイエンス研究科 准教授)
丸山祐造 (千葉大学大学院理学研究院 教授)
森純一郎 (東京大学情報基盤センター 教授)
山崎眞見 (元横浜市立大学大学院データサイエンス研究科 教授)
(肩書は執筆当時のものです)
関連情報
https://www.jss.gr.jp/
公式テキスト・問題集 (統計検定ホームページ)
https://www.toukei-kentei.jp/preparation/books/
書籍紹介:
統計検定「データサイエンスエキスパート」を解説!評価や難易度、統計検定と比較! (BIG DATA LAB
https://bdlab.or.jp/articles/%E7%B5%B1%E8%A8%88%E6%A4%9C%E5%AE%9A-%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88-%E3%82%92%E8%A7%A3%E8%AA%AC-%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%82%84%E9%9B%A3%E6%98%93%E5%BA%A6-%E7%B5%B1%E8%A8%88%E6%A4%9C%E5%AE%9A%E3%81%A8%E6%AF%94%E8%BC%83
関連記事:
データサイエンスを学んだ人材が社会で活躍するために必要なこと
専門教育・非認知能力育成との融合も進展《「数理・データサイエンス・AI」は学ぶと働くをどう変えるか Vol.2》 (『キャリアの広場』 2025年6月17日)
https://www.riasec.co.jp/hiroba/archives/26725
イベント:
「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム・拠点校エキスパート人材育成」発表会 (数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム 2023年12月23日)
https://www.mi.u-tokyo.ac.jp/consortium/expert_development.html
第17回日本統計学会春季集会
「統計検定をめぐる現状と課題,そして発展」
講演3:佐藤 彰洋(横浜市立大学),河合 玲一郎(東京大学),竹村 彰通(滋賀大学)「統計検定DSエキスパートの考え方と取組み」 (一般社団法人 日本統計学会,東京都立大学金融工学研究センター,統計質保証推進協会 2023年3月4日)
https://jss2023spring.ywstat.jp/

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