低カドミウム米の作出に成功
カドミウムは、イタイイタイ病の原因物質であり、人体に有害な重金属の1つです。日本人のカドミウム摂取量は世界の中でも高く、摂取量の約半分がコメに含まれるカドミウムに由来します。カドミウムを多く含むコメを摂取し続けることは、人体に長期的な悪影響を与えると懸念されることから、コメのカドミウム含有量を低下させることは重要です。
東京大学大学院農学生命科学研究科の藤原徹教授らは、カドミウムの少ないコメを生産できるイネの品種の開発へ向けて、イネがカドミウムを種子(コメ)へ輸送する仕組みを分子レベルで理解するための研究を進めてきました。本研究では、OsLCT1という陽イオンのトランスポーターが種子へのカドミウム輸送に重要な役割を果たしていることを明らかにし、遺伝子の発現を抑制することで、玄米に含まれるカドミウムを約半分に低下させることに成功しました。OsLCT1遺伝子の発現抑制により、イネの生長や収量に負の影響を及ぼさずに、玄米のカドミウム濃度を低下させることに成功しました。今後、本遺伝子に変異を持つ系統を育成することで低カドミウム米品種を確立・実用化できる可能性があり、有望な遺伝子であると考えられます。
論文情報
Shimpei Uraguchi, Takehiro Kamiya, Takuya Sakamoto, Koji Kasai, Yutaka Sato, Yoshiaki Nagamura, Akiko Yoshida, Junko Kyozuka, Satoru Ishikawa, and Toru Fujiwara,
“Low-affinity cation transporter (OsLCT1) regulates cadmium transport into rice grains”,
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America オンライン版2011年12月13日(日本時間)
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