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Wntシグナルによる細胞融合制御メカニズムの解明 ヒト妊娠異常から組織再生、がん発症のメカニズムへ

掲載日:2012年1月24日

細胞融合は様々な細胞・組織の形成において必須の役割を果たしており、近年の研究によって、組織の傷害後の再生・修復時に働くなど、広範に生体内で起こる現象であることが明らかになりました。

図

Wntシグナルが細胞融合を制御するシグナル伝達機構の模式図

また、がんの発生における細胞融合の役割も注目を集めています。 Wntシグナルは動物胚発生時の形態形成や様々な組織の傷害後の再生・修復に必須の役割を果たしています。一方でその過剰な活性化は、大腸癌など多くの癌の発生の原因となっています。

今回、東京大学分子細胞生物学研究所の秋山徹教授らは、Wntシグナルの新たな標的遺伝子を探索することにより、胎盤における細胞融合に関連した転写因子GCM1を同定し、その制御機構の詳細を明らかにしました。WntシグナルがGCM1とその下流の融合誘導因子syncytinの発現を制御することにより、細胞融合を制御している事を培養細胞や生体内で確認しました。この結果、良く分かっていなかった細胞融合制御機構の一端を明らかにする事に成功しました。

今回の成果は、ヒトの妊娠異常のメカニズム解明や治療法の開発につながる事が期待され、また、この細胞融合制御機構が他の組織でも普遍的に働いている可能性があり、組織の再生や細胞のがん化の新しい仕組みの解明も今後期待されます。

プレスリリース

論文情報

Ken Matsuura, Takafumi Jigami, Kenzui Taniue, Yasuyuki Morishita, Shungo Adachi, Takao Senda, Aya Nonaka, Hiroyuki Aburatani, Tsutomu Nakamura and Tetsu Akiyama,
“Identification of a link between Wnt/b-catenin signaling and the cell fusion pathway”,
Nature Communications, 2, 548 (2011). doi:10.1038/ncomms1551
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