世界初、滅菌できる柔らかい有機トランジスタの作製に成功 体内に埋め込めるデバイス開発に道
大学院工学系研究科の染谷隆夫教授と関谷毅准教授を中心とした研究チームは、高温の滅菌プロセスに耐え得る柔らかい有機トランジスタを高分子フィルム上に作製することに世界で初めて成功しました。
150℃の高耐熱性の有機トランジスタを実現するための決め手は、厚さ2ナノメートルという極薄の自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer: SAM膜)を高分子フィルム上に高密度で向きを揃える配向させることによって、高温でもピンホールを発生しないようにする絶縁膜形成技術でした。駆動電圧を2Vにまで低減するためには絶縁膜をナノメートル寸法まで薄膜化する必要がありますが、そのような極薄の単分子膜は熱に弱いという従来の常識を覆す成果です。
この成果は、シンクロトロン軌道放射光を使った精密な結晶構造解析によっても実証されました。さらに、熱的に非常に安定な高移動度の有機半導体材料と有機・金属複合材料による封止膜を採用することによって、耐熱性を150℃まで向上することができました。
論文情報
Kazunori Kuribara, He Wang, Naoya Uchiyama, Kenjiro Fukuda, Tomoyuki Yokota, Ute Zschieschang, Cherno Jaye, Daniel Fischer, Hagen Klauk, Tatsuya Yamamoto, Kazuo Takimiya, Masaaki Ikeda, Hirokazu Kuwabara, Tsuyoshi Sekitani, Yueh-Lin Loo, and Takao Someya,
“Organic Transistors with High Thermal Stability for Medical Applications”,
Nature Communications (UK) on March 6th, 2012 (GMT) Online Edition: 2012 / 3 / 7(Japan time)
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