細胞内シグナル伝達経路の感受性制御機構を解明 薬剤応答の感受性を変えるメカニズム
抗がん剤などの薬剤の濃度と、これに対する細胞の応答の強さとの関係は「感受性」と呼ばれ、薬剤の作用を知るうえで重要な指標として利用されています。しかし、この感受性がどのような仕組みにより調節されているかについてはこれまで不明でした。例えば、ある濃度の薬剤が標的分子を十分に阻害できても、細胞の応答を十分に阻害するためにはより高い濃度の薬剤が必要になる場合があります。
そこで東京大学理学系研究科の黒田教授らの研究グループはモデルと実験を用いた解析によって、シグナル伝達分子の分解や不活性化などの負の制御機構が感受性変化を制御していることを見出しました。
この原理によって、薬剤により、標的分子を十分に阻害できても、最終的な応答は必ずしも十分に抑制できないことが明らかになりました。この原理の発見は、薬剤応答の予測や創薬デザインなどに役立つことが期待されます。 この成果はNature Communications誌電子版(2012年3月13日公開)に発表されました。
論文情報
豊島有、角田裕晶、藤田一広、宇田新介、黒田真也、
“Sensitivity control through attenuation of signal transfer efficiency by negative regulation of cellular signaling”,
Nature Communications, 3: 743, (2012):1-8, doi:10.1038/ncomms1745
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