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ニホンミツバチの「熱殺蜂球」形成時の脳の活動を解明 蜂球内の温度情報を処理している?

掲載日:2012年4月4日

ニホンミツバチは、天敵であるオオスズメバチが巣内に侵入すると、数百匹の働き蜂がスズメバチを取り囲んで「蜂球」を形成し、発熱してスズメバチを「蒸し殺し」ます。この行動はセイヨウミツバチでは見られないことから、東アジアに棲息するオオスズメバチに対抗して、ニホンミツバチが独自に獲得した行動と考えられてきました。しかし、この行動がどのような脳の活動により制御されるのかは不明でした。

図1:熱殺蜂球の人為的形成。通常、熱殺蜂球は巣内で形成される。今回我々は、蜂球を形成している働き蜂を継続的に採集するため、針金の先に囮のオオスズメバチを取り付け、巣内に挿入し(A)、形成された蜂球をビーカーに隔離して(B, C)、働き蜂を採集した。蜂球中のオオスズメバチは60分後には死亡していた(D)。

本学大学院理学系研究科の宇賀神篤さんたちは、活動した神経細胞の目印となる遺伝子を利用することで、蜂球を形成しているニホンミツバチの脳では、高次中枢である「キノコ体」の一部の神経細胞が興奮していることを初めて見出しました。さらにこの神経興奮は、ミツバチを蜂球内と同じ高温に曝すことでも再現されました。このことは、蜂球を形成するミツバチの脳では高温情報処理がなされていることを示唆しています。

熱殺蜂球形成では温度が一定(46℃)に保たれることが重要です。今回検出されたキノコ体の神経興奮は、蜂球内の温度モニタリングに関わる可能性が考えられます。今後、熱殺蜂球を形成しないセイヨウミツバチと脳の活動を比較することで、蜂球形成を可能にする脳の仕組みの理解が進むと期待されます。本研究は金沢大学、玉川大学との共同研究として実施されました。

論文情報

Atsushi Ugajin, Taketoshi Kiya, Takekazu Kunieda, Masato Ono, Tadaharu Yoshida, Takeo Kubo,
“Detection of neural activity in the brains of Japanese honeybee workers during the formation of a ‘Hot Defensive Bee Ball’”,
PLoS ONE 7(3): e32902. doi:10.1371/journal.pone.0032902
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