世界最薄かつ最軽量の有機太陽電池の実現に成功
有機半導体を用いた太陽電池は、高分子フィルムの上に容易に製造でき、大面積・低コスト・軽量性を同時に実現できると期待されています。しかし、ガラス基板上と同程度の高エネルギー変換効率をもつ有機太陽電池を、柔軟性に富む薄膜の高分子フィルム上に作製することは困難であり、その解決策が求められていました。
東京大学大学院工学系研究科の染谷教授や関谷准教授らは、厚さ1.4マイクロメートルという極薄の高分子フィルムに、有機半導体薄膜を均一に形成するプロセス技術を開発し、世界で最薄かつ最軽量の有機太陽電池を高分子フィルム上に作製することに成功しました(図)。この有機太陽電池1gあたりの発電量は10Wに相当し、折り曲げや伸縮を行っても、電気的・機械的な特性が劣化しません。これは、あらゆる太陽電池と比較しても最軽量、最薄、最柔軟な太陽電池です。
本成果により、今後、太陽電池の携帯用情報通信機器への応用や、身に着けても重さを感じさせないヘルスケアや医療用デバイス用の電力供給源など新たな用途が拡大するものと期待されます。
本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(ERATO)の研究領域「染谷生体調和エレクトロニクス」(研究総括:染谷隆夫 東京大学 教授、バイオ印刷グループリーダー関谷毅 東京大学 准教授)、ヨハネスケプラー大学リンツ校(Martin Kaltenbrunner博士、Siegfried Bauer 教授、Niyazi Serdar Sariciftci教授)との共同研究として行われました。4月4日午前0時(日本時間)にNature Communications誌のオンライン版で公開されています。
論文情報
Martin Kaltenbrunner, Matthew S. White, Eric D. G?owacki, Tsuyoshi Sekitani, Takao Someya, Niyazi Serdar Sariciftci, Siegfried Bauer,
“Ultrathin and lightweight organic solar cells with high flexibility “,
Nature Communications 3 (770), doi:10.1038/ncomms1772
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