新たな電気分極発現原理を有機強誘電体で実証 高機能な強誘電体実現に向けて期待される電子移動機構
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所の研究グループ(構造物性研究センター・小林賢介研究員、熊井玲児教授、村上洋一センター長)、産業技術総合研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センター フレキシブル有機半導体チーム・堀内佐智雄チーム長、東京大学工学系研究科物理工学専攻・賀川史敬特任講師、東京大学工学系研究科物理工学専攻・理化学研究所基幹研究所グループディレクター・十倉好紀教授は共同で、有機強誘電体の電気分極の大きさと方向が分子間の動的な電子移動によって決定される、新規な分極発現機構を電気分極測定と放射光X線回折実験を通じて明らかにした。さらに、この「電子型強誘電性」と呼ばれる現象は、イオンの変位に伴い静電荷が偏り自発分極が生じるという古典的な描像(イオン変位モデル)に比べ、20倍以上もの大きな電場応答を発揮することも見出された。今後の強誘電体の高性能化を目指す上で、同原理をいかした新しい設計指針の展開が期待される。
論文情報
K. Kobayashi, S. Horiuchi, R. Kumai, F. Kagawa, Y. Murakami, and Y. Tokura,
“Electronic Ferroelectricity in a Molecular Crystal with Large Polarization Directing Antiparallel to Ionic Displacement”,
Physical Review Letters 108 (2012): 237601, doi: 10.1103/PhysRevLett.108.237601.
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