粒子法による東日本大震災の津波そ上の大規模シミュレーョン スーパーコンピュータを用いた3次元解析

東京大学大学院 工学系研究科 システム創成学専攻の室谷浩平特任研究員と越塚誠一教授は、粒子法というシミュレーション技術を用いて、東日本大震災で発生した津波のそ上の大規模3次元シミュレーションを、東京大学情報基盤センターに設置されたスーパーコンピュータを用いて実施しました。
東日本大震災で発生した津波は、防波堤を超えて沿岸の陸上をそ上することで被害が拡大しました。津波のそ上をシミュレーションできるようにすることは、津波被害を予測する上で必要不可欠であるだけでなく、津波の被害を低減する方法や避難の方法を検討するためにも重要です。しかし、(1) 複雑な地形を詳細に扱うこと、および、(2) 津波がそ上する広い地域を扱わなければならないため非常に大規模なシミュレーションになること、という課題がありました。
そこでまず、第一の課題に関しては、東京大学で独自に開発した粒子法と呼ばれるシミュレーション技術を用いて、複雑な地形を詳細に扱えるようにしました。第二の課題については、粒子法の大規模並列計算技術を新たに開発し、東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータFX10を用いました。
石巻市の一部に対する計算結果を図に示します。津波が陸の奥までそ上し、高台のふもとまで達していることがわかります。また、河口に津波が集中し、上流まで津波がさかのぼっていく様子も再現されています。
以上の手法で実現した津波のそ上の大規模3次元シミュレーションは、津波被害の予測、被害の低減、避難方法の検討のために重要な情報を提供できます。
論文情報
日本機械学会 第25回計算力学講演会(神戸、2012年10月9~11日)において発表予定