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生体組織の蛍光標識微細断片における遺伝子発現量測定の新技術 脳で活性化した遺伝子発現はべき乗則に従う

掲載日:2013年1月18日


LMDにより極めて精細に組織切片を切り出すことができることを示した一例 © Yoshioka, W. et al. Sci. Rep. 2:783, 2012
ニッスル染色した組織切片からLMDにより”LMD”という文字型の領域を得た。(a)明視野写真, (b)蛍光写真, (c)拡大した蛍光写真。スケールバーは 200 μm (a,b)、 50 μm (c)を表す。

東京大学 大学院医学系研究科・疾患生命工学センター健康環境医工学部門の吉岡亘特任助教、掛山 正心助教、遠山千春教授は、Leica Microsystems社との国際共同研究により、レーザーマイクロダイセクション法(LMD)と逆転写DNA増幅定量法(RTqPCR)を改良し、生体の顕微鏡組織切片のごくわずかな断片における遺伝子発現の程度を高感度に測定する新しいLMD-RTqPCR法を開発しました。

さまざまな器官や部位における遺伝子発現の程度を測定する技術はこれまでに数多く存在しますが、その感度や定量性には克服すべき問題が残っていました。極めて微小な部位や細胞レベルにおける遺伝子発現の定量にはさらに多くの制限がありました。今回開発したLMD-RTqPCR法は、これらの問題を大きく改善することに成功しました。また本技術を用いることで、新しい環境に置かれたマウスの特定の脳部位(海馬)において特定の遺伝子群が短時間に顕著に発現することがわかりました。本技術は、さまざまな病態における細胞機能解明のための新しいツールになることが期待されます。

本研究は文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム(脳プロ)の一環として、また文部科学省科学研究費補助金、厚生労働科学研究費補助金等の助成を受けて行われました。脳プロでは現在、この技術を用いて、脳の健やかな育ちの解明に関するプロジェクトを中心として、脳機能の解明と精神疾患メカニズムの解明に取り組んでいます。今回開発した技術は、病理組織と遺伝子発現をつなぐ新しい解析法として、医科学全般、環境化学物質リスク研究等の広い分野での発展も期待されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Wataru Yoshioka, Nozomi Endo, Akie Kurashige, Asahi Haijima, Toshihiro Endo, Toshiyuki Shibata, Ryutaro Nishiyama, Masaki Kakeyama, Chiharu Tohyama,
“Fluorescence laser microdissection reveals a distinct pattern of gene activation in the mouse hippocampal region”,
Scientific Reports Online Edition: 2012/10/30 PM7:00(Japan time), doi: 10.1038/srep00783.
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