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自然界で最も低密度の液体 2次元ヘリウム3の自己凝縮

掲載日:2013年1月30日

物質は一般に、低温では構成粒子の自由な熱運動が少なくなり、やがて固体となる。しかし、質量が小さく量子性の高い粒子からなる物質は、絶対零度でも固化せず液体や気体にとどまる可能性があり、量子液体・量子気体とよばれる。これまで基底状態(エネルギーが最も低い安定状態)が量子気体となる物質は観測されたことがないが、現実の系の中で唯一、ヘリウム3原子を2次元空間に閉じ込めた系は、その有力候補だと考えられてきた。

グラファイト表面の2次元空間に閉じ込められたヘリウム3原子(黄色)が、絶対零度付近で、自己凝縮(液化)したイメージ図。このパドルは自然界で最も低い密度の液体である。青色はグラファイト表面を覆う単原子層の固体ヘリウム4。c Fukuyama lab

ところが、今回、東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻の福山寛教授と日本学術振興会特別研究員の佐藤大輔博士の研究グループは、グラファイト表面にヘリウム3の単原子層膜を吸着させた2次元ヘリウム3原子系の熱容量を、絶対零度に近い2mK(mKは千分の1ケルビン)の超低温度まで測定し、この系が、量子気体になるのではなく、これまで知られるどの液体よりも低密度の液体相の“水たまり(パドル)”状に凝縮し、それ以外の基板表面は真空となることを発見した。さらに、これが2次元ヘリウム3原子系の普遍的な性質であると結論した。これは、従来の理論予測を覆す実験結果であり、理論の再検討あるいは新たな理論の構築を迫っている。自然界には固体中の電子系、原子核、中性子星など多様な量子流体が存在するが、気相 ─ 液相転移を詳細に実験研究できる物質は液体ヘリウムに限られる。今回、その制御パラメータに次元性が加わったことで、量子流体のより深い理解につながる。

プレスリリース

論文情報

D. Sato, K. Naruse, T. Matsui, and Hiroshi Fukuyama,
“Observation of Self-Binding in Monolayer 3He”,
Physical Review Letters (2012): 235306-1-4, doi: 10.1103/PhysRevLett.109.235306.
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大学院理学系研究科

物理学専攻

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