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世界最強X線レーザービームが誕生 ―原子レベルの精度を持つ鏡により、1マイクロメートルの集光ビームを実現―

掲載日:2013年1月31日

兵庫県西播磨にあるX線自由電子レーザー(XFEL: X-ray Free Electron Laser)施設SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser、さくら)は、波長が1オングストローム以下のX線のレーザーが利用可能な施設です。このXFELを用いることで、未だ解明できていないタンパク質の構造や、極限状態での物質の構造変化を調べることができます。これらを実現させるためには、XFELを一点に集め強度を飛躍的に高めることが不可欠でした。

超高強度X線自由電子レーザー集光ビームが拓く世界 c Hirokatsu Yumoto (JASRI)SACLAと集光鏡を組み合わせることで、SACLAが発する強烈なXFELの密度をさらに4万倍に向上することができ、人類が手にしたことのない超高強度のXFELによって新しいサイエンスが切り拓かれる。

高輝度光科学研究センター湯本博勝研究員、大阪大学大学院工学研究科 山内和人教授、東京大学大学院工学系研究科 三村秀和准教授、理化学研究所放射光科学総合研究センター 矢橋牧名グループディレクター、理化学研究所基幹研究所 大森整主任研究員らのグループは、独自に開発した超精密加工技術を駆使し、原子レベルの表面形状精度をもつ420mmの集光鏡を開発しました。この集光鏡をSACLAに適用し、理論通りの集光サイズを有するXFELのマイクロビームの実現に成功しました。これにより、XFELの光の密度を世界で最も高い集光強度(6×1017W/cm2)を達成しました。

今回実現した超高強度XFELマイクロビームを用いたイメージング手法により単細胞生物や複合タンパク質の構造解明のための研究が既に始まっています。また、これを利用することで、将来、原子分解能でタンパク質の立体構造の時間変化をスナップショット撮影可能な顕微鏡の実現が図られ、これにより疾病の原因解明や新薬の開発が促進されるものと期待されます。

プレスリリース

論文情報

Hirokatsu Yumoto, Hidekazu Mimura, Takahisa Koyama, Satoshi Matsuyama, Kensuke Tono, Tadashi Togashi, Yuichi Inubushi, Takahiro Sato, Takashi Tanaka, Takashi Kimura, Hikaru Yokoyama, Jangwoo Kim, Yasuhisa Sano, Yousuke Hachisu, Makina Yabashi, Haruhiko Ohashi, Hitoshi Ohmori, Tetsuya Ishikawa, Kazuto Yamauchi,
“Focusing of X-ray free electron laser pulses with reflective optics”,
Nature Photonics Online Edition: 2012/12/17 (Japan time), doi: 10.1038/nphoton.2012.306.
論文へのリンク

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大学院工学系研究科

大学院工学系研究科 精密工学専攻

大学院工学系研究科 精密工学専攻 国枝・三村研究室

SACLA

SPring-8

理化学研究所基幹研究所 大森素形材工学研究室

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