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核酸治療を進化させる新しい分子戦略 細胞内のATPを感知して核酸医薬を徐放する“ナノキャリア”の開発

掲載日:2013年2月4日

“がんなどの難治性疾患を遺伝子レベルから治療する”ことを目指して、ショートインターフェアリングRNA(siRNA)を薬剤として役立てる研究が近年注目されています。siRNAは細胞質内に入ることで相補的な配列を持つメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する効果(RNA干渉)があることが知られており、異常タンパク質の生成を特異的に抑制することにより治療効果が期待されます。しかし、siRNAはそのまま血中に投与しても速やかに分解/代謝を受けて消失してしまう為、実際の治療応用へはsiRNAを目的の細胞内へ効率的に送り届け、かつ安全性の高い高機能なデリバリーキャリアが必要不可欠とされています。

細胞内外のATP濃度に応答したsiRNAの放出が確認された c Mitsuru Naito

東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻/東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門の片岡一則教授の研究グループは、東京医科歯科大学 生体材料工学研究所の宮原裕二教授の研究グループとの共同研究において、世界で初めて細胞内外のアデノシン三リン酸(ATP)濃度の違いを認識してsiRNAを放出するデリバリーキャリアのプラットフォーム技術の開発に成功しました。

正電荷をもつ合成高分子と負電荷をもつ核酸分子が静電的に引き付け合い、それらが多分子会合することによって形成されるsiRNA内包ナノ粒子(ポリイオンコンプレックスミセル)技術と、RNAの末端部位などと特異的に結合可能な分子(フェニルボロン酸)とを組み合わせることにより、細胞外においてはsiRNAを分解などから安定に保護する一方で、細胞質内到達後は高濃度のATP濃度にさらされることでsiRNAを細胞質内へと速やかに放出することを可能としました。

これにより疾患部位へのsiRNAデリバリー効率が格段に高められ、難治性疾患に対してもより一層治療効果の増強が期待されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Mitsuru Naito, Takehiko Ishii, Akira Matsumoto, Kanjiro Miyata, Yuji Miyahara, Kazunori Kataoka,
“A Phenylboronate Functionalized Polyion Complex Micelle for ATP-Triggered Release of siRNA”,
Angewandte Chemie International Edition, Vol.51, 2012: 10751-10755, doi: 10.1002/anie.201203360.
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