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明らかになった沖ノ鳥島サンゴ種リスト  

掲載日:2013年2月19日

東京大学大学院理学系研究科の茅根創教授らは、日本最南端の沖ノ鳥島に分布するサンゴ種の完全なリストをまとめ、種の多様性は熱帯にありながら93種と少ないことを明らかにした。これは、より高緯度の八重山諸島(368種)の4分の1、マリアナ諸島(205種)の半分、ずっと北方の九州天草(98種)と同程度である。沖ノ鳥島にのみ分布する種は認められなかったが、種の構成は琉球列島、小笠原・マリアナ諸島、パラオなど、周辺のどのサンゴ礁とも異なる貴重な群集であることがわかった。サンゴは、島内のパッチ(サンゴからなる小丘)には20%以上の高被度で分布している場所もある。本成果は、これまでの国土交通省、水産庁、東京都の調査結果と標本を、実際に現地の調査にあたったサンゴの専門家とともに検討し、追加の調査も行ってまとめたものである。

(上)沖ノ鳥島の位置とその周辺の排他的経済水域 
© Hajime Kayanne
(下)沖ノ鳥島 
© 国土交通省 京浜河川事務所

沖ノ鳥島にどのようなサンゴが分布しているのか(サンゴ相)について、これまで完全なリストはまとめられていなかった。そのため、サンゴの世界的分布核心域に接していながら、同島のサンゴ相は生物地理の空白域となっていた。沖ノ鳥島の種の多様性が少ないことは、同島が小さな卓礁でありサンゴの生息場の多様性が小さいことと、孤立しているため他のサンゴ礁からサンゴ幼生の加入の機会が少ないことによって説明される。

沖ノ鳥島は、周囲に40万平方km もの排他的経済水域(EEZ)を持つ島である。同島は東西4.5km、南北1.7kmと小さく、さらに国際法上「島」として認められる高潮位以上の陸地は、北小島と東小島の2小島だけで、両島は今世紀の海面上昇で水没の危機にある。こうした状況をふまえ、平成22年(2010年)に「低潮線保全・拠点施設整備法」が成立・施行され、同法に基づいて沖ノ鳥島は特定離島と位置づけられた。特定離島の保全とその利活用のための拠点整備がはじめられ、その重要な柱として、島を造るサンゴの増殖による生態工学的な島の維持・保全がうたわれている。本論文で同島のサンゴリストを提示したことは、今後の同島の利活用と生態系の保全,島の維持・保全をはじめる基礎となる情報を提供する。

本研究で用いられたサンゴ標本の一部は、本成果の公表にあわせて、東京大学総合博物館において展示・公開する。

プレスリリース

論文情報

Hajime KAYANNE, Chuki HONGO, Ken OKAJI, Yoichi IDE, Takeshi HAYASHIBARA, Hidekazu YAMAMOTO, Nobuo MIKAMI, Kiyoshi ONODERA, Takaaki OOTSUBO, Hiroyuki TAKANO, Makoto TONEGAWA, Shogo MARUYAMA,
“Low species diversity of hermatypic corals on an isolated reef, Okinotorishima, in the northwest Pacific(孤立したサンゴ礁,北西太平洋沖ノ鳥島における造礁サンゴの低い多様性)”,
Galaxea, Journal of Coral Reef Studies Online Edition: 2013/2/4 (Japan time), doi: 10.3755/galaxea.14.73.
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