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ナノシートトランジスタ 電圧による超伝導の精密制御

掲載日:2013年2月28日

東京大学大学院工学系研究科量子相エレクトロニクス研究センターの叶劍挺特任講師、岩佐義宏教授率いる研究グループは、グラフェンに続く新たな原子膜材料として注目される二硫化モリブデンの電界効果トランジスタを作製し、これが優れたトランジスタ特性を示すと同時に、電圧印加によって超伝導を発現させ、それを制御することに成功した。

今回の研究で用いたトランジスタのデバイス構造
© Iwasa Laboratory

MoS2原子膜をトランジスタのチャネルに用いて良好なトランジスタ動作を実現した。さらに、上部の電気二重層を介したゲート電極1と、下部の固体絶縁体を介したゲート電極2によって、超伝導を精密制御することに成功した。

低消費電力化を目指したトランジスタ材料の研究は、酸化物や有機物を中心に進められているが、原子層厚みのグラフェンも有力な材料として検討されている。しかしグラフェンはバンドギャップが小さく、スイッチング特性に限界があるため、十分な大きさのバンドギャップを持つ材料の開発が求められている。研究グループは、古くから潤滑剤として知られる二硫化モリブデン(MoS2)を対象に選び、ゲート絶縁体に電気二重層を使用したトランジスタを作製した。その結果、電圧の印加によって、MoS2が10K以下で超伝導になることが確認され、その転移温度を電圧によって連続的に変化させることに成功した。

本研究は、超伝導の強力な制御法を提供するとともに、MoS2をはじめとする一群の物質がグラフェンに続く有力な原子膜物質となることを明らかにした。

プレスリリース [pdf]

論文情報

J. T. Ye, Y. J. Zhang, R. Akashi, M. S. Bahramy, R. Arita, and Y. Iwasa,
“Superconducting Dome in a Gate-Tuned Band Insulator”,
Science vol.338, 2012: 1193-1196, doi: 10.1126/science.1228006.
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