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青色発光体中の発光原子一個の観察に成功 原子一個がつくる空間が発光の源であることを解明

掲載日:2013年3月7日

東京大学 大学院工学系研究科 総合研究機構の幾原雄一教授、柴田直哉准教授らの研究グループは、京都大学(田中功教授、大場史康准教授)および(独)物質・材料研究機構(谷口尚 グループリーダー)と共同で、代表的な超硬質材料である立方晶窒化ホウ素に希土類元素(Ce: セリウム)の極微量添加により発現する青色発光が、原子レベルで制御されたCeと原子空孔からなる複合点欠陥に起因することを明らかにしました。

c-BN結晶中のCe原子を捉えた原子分解能STEM像
© Ryo Ishikawa

紫外・可視光領域での発光材料として希土類元素はよく用いられますが、必ずしもすべての材料に添加できるわけではありません。特に立方晶窒化ホウ素は、原子サイズの小さな軽元素から構成される高密度物質(ダイヤモンドに次ぐ硬度)であるため、原子サイズの大きな希土類元素の添加は極めて困難と考えられてきました。しかし、本研究では、物質・材料研究機構の最新技術、超高圧を利用して高密度物質の微細構造制御を目指すナノテクノロジーにより、希土類添加に最適な溶媒および高温高圧条件(1,500度、55,000気圧)を見出し、青色発光特性を有するセリウム添加-立方晶窒化ホウ素の単結晶を合成することに成功しました。今回添加されたセリウム原子を、最先端の収差補正走査透過型電子顕微鏡によって直接観察するとともに、スーパーコンピューターを用いた理論計算により、セリウム原子は単純な原子置換ではなく周囲に4つの原子空孔を導入し十分な空間を得ることで置換が可能となったことを初めて明らかにしました。すなわち、立方晶窒化ホウ素に添加されたセリウム原子は複雑な複合欠陥を形成し、これが青色発光の起源になっていることを世界に先駆けて発見しました。

プレスリリース

論文情報

Ryo Ishikawa, Naoya Shibata, Fumiyasu Oba, Takashi Taniguchi,
Scott D. Findlay, Isao Tanaka and Yuichi Ikuhara,
“Functional Complex Point-Defect Structure in a Huge-Size-Mismatch System”,
Phys. Rev. Lett. 110, 065504 (2013). doi: 10.1103/PhysRevLett.110.065504.
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