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脳脊髄神経系へのメッセンジャーRNA(mRNA)送達 新しい核酸医薬としてのmRNA治療応用に向けたデリバリーシステム開発

掲載日:2013年3月7日

脳や脊髄などの中枢神経系疾患は、根治的治療が困難な難治疾患の代表例です。メッセンジャーRNA(mRNA)は目的とするタンパクを神経細胞で効率よく産生させる機能を持つため新しい核酸医薬として治療への応用が期待されています。しかし、mRNAは極めて不安定で生体内では急速に分解されてしまうこと、また自然免疫機構を刺激して、生体内で強い炎症反応を引き起こすことから、これまでmRNAの治療への応用例はほとんどありませんでした。

© Satoshi Uchida et al.

今回、このmRNAによる新しい中枢神経系疾患への治療実現に向けて、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻/東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門の片岡一則教授・同医学系研究科の位髙啓史特任准教授の研究グループは、高分子ミセル型ドラッグデリバリーシステム(DDS)を新たに開発し、mRNAの中枢神経系への安全な送達・機能発現に世界で初めて成功しました。

本研究では、mRNAを内包させた高分子ミセルを脳脊髄組織へ投与することにより、5日間にわたる持続的なタンパク発現を得ました。このmRNAによる長期持続性機能発現における高分子ミセルが、mRNAを安定に保持する働きに加え、自然免疫機構に認識されることを防ぎ、炎症反応の発生を抑える働きをもつことを明らかとしました。本システムによる安全・実用的なmRNA送達の実現により、アルツハイマー病、脊髄損傷といった難治性の中枢神経疾患・外傷に対して、画期的な新規治療法の開発に繋がることが期待されます。

プレスリリース [pdf]

論文情報

Satoshi Uchida, Keiji Itaka, Hirokuni Uchida, Kentaro Hayakawa, Toru Ogata, Takehiko Ishii, Shigeto Fukushima, Kensuke Osada, Kazunori Kataoka,
“In Vivo Messenger RNA Introduction into the Central Nervous System Using Polyplex Nanomicelle”,
PLoS ONE 8(2): e56220. doi: 10.1371/journal.pone.0056220.
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