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電子のガラス状態を発見 ガラス化メカニズムの普遍的解明へ大きく前進

掲載日:2013年6月20日

最先端研究開発支援プログラム(FIRST)課題名「強相関量子科学」(中心研究者:十倉好紀)の事業の一環として、東京大学大学院工学系研究科の賀川史敬 講師、大学院生 佐藤拓朗氏、十倉好紀 教授らの研究グループは、三角格子を持つ層状有機化合物を急冷すると電子がガラス状態を形成することを発見しました。

© Fumitaka Kagawa. 低温に向かって電荷の揺らぎが凍結する様子

液体中の原子や分子は通常、低温にすると凍って周期性を持った結晶を組みますが、中には急冷することによって周期性を持たないガラス状態へと凍結するものも数多く存在します。電子同士が強く相互作用し合う強相関電子系と呼ばれる物質群においては、いわば液体のように遍歴していた電子が、低温で結晶化して局在する現象がしばしば観測されます。このような振る舞いは通常の液体の結晶化と一見似ているにもかかわらず、結晶化が急冷によって妨げられてガラス化するという現象は電子系においてこれまで知られていませんでした。今回賀川史敬 講師らの研究グループは電気抵抗の揺らぎを10マイクロ秒の分解能で測定すると共にX線回折実験を行うことで、急冷下で電子が10~20ナノメートルサイズのクラスターを形成しつつガラス化することを初めて見出しました。また、電子がガラス化する過程は、液体がガラス化する過程によく似ており、両者の間には普遍的なメカニズムが働いている可能性が示唆されました。電子ガラスの研究を通じて、ガラス化メカニズムの普遍的な理解へ向けて大きく前進することが期待されます。

本研究は、東京大学の鹿野田 一司 教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の熊井 玲児 教授、村上 洋一 教授らと共同で行われ、2013年6月10日(日本時間)に英国科学誌「Nature Physics」のオンライン版で公開されました。

プレスリリース

論文情報

F. Kagawa, T. Sato, K. Miyagawa, K. Kanoda, Y. Tokura, K. Kobayashi, R. Kumai, Y. Murakami,
“Charge cluster glass in an organic conductor”,
Nature Physics Online Edition: 2013/6/10 (Japan time), doi: 10.1038/NPHYS2642.
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