希望学 あしたの向こうに 希望の福井、福井の希望
「声に出してみよう」「外に目を向けよう」「とにかくやってみよう」
本書に収められた27章には、これらのメッセージのいずれかが含まれている。そこには、迫りつつある困難に対して今まさに立ち向かっている福井人もいれば、試練の局面で奮闘してきた福井人の姿もあった。
福井県は浄土真宗の信徒が多い県だが、宗祖である親鸞は、声を出すことの大切さを説いた。地形的に細かく分断された福井には、人の移動が少なかった現実がある。一方、開かれた港や街道を通じて外に目を向け、多くの出会いが生まれ、希望の芽が育まれてきた歴史もある。高品質の技術に支えられた産業も、とにかくやってみることで試行錯誤を積み重ねた末に生み出されたものである。これまで培ってきたが、ややもすれば忘れかけていたものを、時代の風をとらえつつ再生するところに、希望は宿る。
三世代家族の変容、新幹線の開通、国のエネルギー政策の転換など、福井にはそう遠くない将来、否応もなく大きな変化が待ち受けている。その大波を福井の人々は、どのようにして乗り越え、希望と幸福を両輪とした新しい未来につなげていくのか、法学、政治学、経済学、社会学等の研究者が、福井県を舞台に、地域社会にとっての希望を考えるエッセイ集。福井の未来は、日本の未来である。
書誌情報
東大社研・玄田有史編
『希望学 あしたの向こうに 希望の福井、福井の希望』(東京大学出版会、2013年)