ポストグラフェン材料WSe2に新たな機能 電場でスピン自由度の制御が可能に
東京大学大学院 工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の岩佐義宏 教授、袁洪涛(ユアン ホンタオ)前 特任助教(現スタンフォード大学応用物理学科研究員)、有田亮太郎 准教授らは、理化学研究所創発物性科学研究センター 永長直人 副センター長、Bahramy研究員らと共同で、グラフェンに続く新たな原子膜材料のひとつである二セレン化タングステン(WSe2)に強電場がかけられる特別なトランジスタを作製した。その結果、通常は磁場と結合するスピン自由度の偏極を電場によって制御できることを見いだした。
蜂の巣構造をもつ層状物質では、しばしば奇妙な電子状態が実現する。典型的な例がグラフェンで、質量があたかもゼロになったかのような状態があらわれる。本研究の研究対象である二セレン化タングステンでは、グラフェンと異なり構成元素が重く相対論効果が強く現れるため、スピン軌道相互作用と呼ばれる効果により、電子の軌道運動と物質の磁気的性質を支配するスピン自由度が強く結合する。その結果、電圧をかけることによって、電子の軌道運動だけでなく、スピンの自由度も制御することが可能となる。特に興味深いのは、電場をかけた方向にスピンの偏極がおこることで、蜂の巣構造をもつ半導体のスピン自由度の新しい制御法を提供するものである。 本研究成果は英国科学雑誌『Nature Physics』(7月28日号)に掲載された。
論文情報
Hongtao Yuan, Mohammad Saeed Bahramy, Kazuhiro Morimoto, SanfengWu, Kentaro Nomura, Bohm-Jung Yang, Hidekazu Shimotani, Ryuji Suzuki, Minglin Toh, Christian Kloc, Xiaodong Xu, Ryotaro Arita, Naoto Nagaosa and Yoshihiro Iwasa,
“Zeeman-type spin splitting controlled by an electric field”,
Nature Physics Online Edition: 2013/7/28, doi: 10.1038/NPHYS2691.
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