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超伝導体の物質設計に道を開く新たな理論計算手法の開発 超伝導体の転移温度を高い精度で計算することに成功

掲載日:2013年8月29日

高温超伝導体の予言、設計は物性物理学における最大の挑戦的課題の一つである。この究極の目標を達成するためには、超伝導体の転移温度を正確に予測する手法の開発が必要不可欠である。超伝導はフォノン、プラズモン、エキシトン、スピン揺らぎなどを媒介として実現する。この中で、フォノンを媒介とする超伝導については、2005年に密度汎関数理論とよばれる理論の枠組みの中で正確にその転移温度が予測できることが示された。しかし、フォノン以外の非従来型と呼ばれる超伝導体については、定式化がなされてこなかった。非従来型超伝導体の中には、しばしば非常に高い転移温度をもつ物質が見つかっているため、密度汎関数理論を非従来型の超伝導体に拡張することは高温超伝導体の物質設計にとって欠かせない。

© Ryotaro Arita, 超伝導の転移温度の理論値と実験値の比較。従来の手法による結果を赤で、新しく開発された手法による結果を紫で示している。○、△、□、?は4つのグループの実験値である。従来の手法では格子振動の効果のみ取り入れられ、転移温度は過小評価されるが、新しい手法では電子の振動も取り入れられてより正確な見積もりが可能になった。

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の有田亮太郎准教授と明石遼介大学院生(博士課程)は、非従来型の超伝導のプロトタイプのひとつで70年代以来の研究の歴史をもつプラズモン機構を取り扱う方法論を構築した。開発された手法を単体の高温超伝導体の一つである圧力下のリチウムに適用したところ、本手法を用いて予測した転移温度が実験データによる転移温度正確に再現されることを見いだした。

本手法により、新たな超伝導体物質を設計する指標が提示されるため、今後の材料探索や合成が一気に加速し、将来的には超伝導モーターや送電線の実現に資することが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「Physical Review Letters」(オンライン版8月1日号)に発表されました。

プレスリリース

論文情報

Ryosuke Akashi and Ryotaro Arita,
“Development of Density-Functional Theory for a Plasmon-Assisted Superconducting State: Application to Lithium Under High Pressures”,
Physical Review Letters 111, 057006 (2013), doi: 10.1103/PhysRevLett.111.057006.
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