ナノスケールのスピン渦「スキルミオン」を利用したマイクロ波整流効果を発見 マイクロ波応答の新原理を実証
物質には磁性が存在し、私たちの生活において広く応用されています。身の回りにある磁石はもちろん、パソコンの磁気ヘッドなどその活躍の場は多岐にわたります。磁性は電子のスピンが規則正しく配列することにより発現しますが、複雑なスピン配列には本来の磁石としての性質だけではなく、付加的な機能性が生じることがしばしばあります。最近になり、スピンが渦巻き状に配列した「スキルミオン」が特殊な結晶構造を持つ磁性体中において発見されました。スキルミオンはその特殊なスピン配列ゆえに粒子としての性質を持ち、また一つが数十ナノメートルという大きさであるために、次世代の記憶素子における情報担体としての可能性が指摘されています。現在ではその学術基盤構築、ひいては応用にむけ、スキルミオンの新奇な外場応答の探索が盛んに進められています。
最先端研究開発支援プログラム(FIRST)課題名「強相関量子科学」の事業の一環として、東京大学大学院工学系研究科の十倉好紀教授と岡村嘉大大学院生、賀川史敬講師らの研究グループは、スキルミオンが磁気共鳴を起こす際に吸収されるマイクロ波の量がマイクロ波の伝搬方向によって変わるという現象の観測に成功しました。本成果で見出された新規機能性やその動作原理を応用することで、マイクロ波整流デバイスや電場を加えることによって透磁率が変わるインダクターなど、スキルミオンを基盤とした応用の可能性が示されました。
論文情報
Y. Okamura, F. Kagawa, M. Mochizuki, M. Kubota, S. Seki, S. Ishiwata, M. Kawasaki, Y. Onose, Y. Tokura,
“Microwave magnetoelectric effect via skyrmion resonance modes in a helimagnetic multiferroic”,
Nature Communications Online Edition: 2013/8/30 18:00(Japan time), doi: 10.1038/ncomms3391.
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