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光でナトリウムを排出するポンプの発見 海洋細菌にて微生物由来の新しいロドプシンが見いだされる

掲載日:2013年9月19日

太陽光エネルギーを使って水素イオンを排出、あるいは塩素イオンを細胞内へ取り込むポンプは古くから知られていた。しかし、生体にとって重要な電解質の一つであるナトリウムイオンのポンプは見つかっておらず、細菌が太陽光エネルギーをナトリウムイオンの輸送のために使うことは全く考えられてこなかった。

© Kazuhiro Kogure, ロドプシンを保持する海洋細菌

東京大学大気海洋研究所・地球表層圏変動研究センターの吉澤晋特任研究員、木暮一啓教授らは、名古屋工業大学の井上圭一助教、神取秀樹教授らと共同で、光エネルギーを使ってナトリウムイオンを菌体外に排出する新しいタイプのタンパク質、ナトリウムポンプ型ロドプシンを海洋細菌の一種、Krokinobacter eikastus において新たに発見し、従来の定説を覆した。

ロドプシンは、私たちの目の視紅として知られる光受容性のタンパク質だが、藻類や細菌の間にも分布し、水素イオンや塩素イオンのポンプなどとしても機能している。今回の発見につながった海洋細菌は、2種類のロドプシン(KR1、 KR2)を有していた。KR1は水素イオンを排出するポンプであり、KR2はナトリウムイオンを排出するとともに、イオン環境や増殖期に応じてリチウムや水素イオンも排出するポンプであることが分かった。さらに、KR2の立体構造を解析することで、KR2におけるナトリウムイオンの結合部位や反応過程の詳細も明らかにした。

本研究は光エネルギーを使ってナトリウムイオンを排出する生物機能についての初の報告であり、今後のロドプシン研究に新しい展開をもたらす可能性が高い。また、地球上の生物における光利用の進化の過程、光エネルギーの利用がもたらす優位性、海洋生態系への新たな光エネルギー流入の過程など、多くの新しい研究領域の開拓にもつながると期待される。

論文情報

Keiichi Inoue, Hikaru Ono, Rei Abe-Yoshizumi, Susumu Yoshizawa, Hiroyasu Ito, Kazuhiro Kogure, Hideki Kandori,
“A light-driven sodium ion pump in marine bacteria”,
Nature Communications Online Edition: 2013/04/10(Japan time), doi: 10.1038/ncomms2689.
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大気海洋研究所

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