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マルチフェロイック材料の電磁気構造を原子分解能で評価する技術を確立 強誘電性ドメインをサブオングストロームの空間分解能で精密に評価

掲載日:2013年10月11日

新しい材料の開発にはその材料の原子構造だけではなく、電磁気構造も高い分解能で評価する必要があります。これまで、東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の幾原雄一教授らのグループは、最新の走査透過型電子顕微鏡を用いて材料内部の原子構造を直接観察する技術を開発してきました。さらに、電磁気構造についても同様な分解能で評価する技術の開発を進めています。

© Takao Matsumoto, 2つの異なるドメインウォール(a:LDW(ドメインウォールが横に並ぶ)、b:TDW(ドメインウォールが縦に並ぶ))における電気分極の観察例。赤色は上向きの分極、水色は下向きの分極を示す。いずれのドメインウォールにおいても原子スケールで急峻に分極方向が変化していることが確認された。 c:六方晶YMnO3(Y:イットリウム、Mn:マンガン、O:酸素)単結晶薄膜中の強誘電性分極構造(ドメイン)を超高分解能走査透過電子顕微鏡により観察し、統計的画像処理により求めた平均像(HAADF-STEM像)。白丸が原子位置を示している。図に示すように上側のイットリウム原子層において0.48オングストローム、下側のマンガン酸素原子層において0.16オングストロームの微小な変位が鮮明に観察された。

今回、東京大学の幾原雄一教授、柴田直哉准教授、松元隆夫主任研究員らの研究グループは、物質・材料研究機構(木村秀夫グループリーダーらの研究グループ)及びオーストラリアWollongong大学(Xiaolin Wang教授らの研究グループ)と共同で、球面収差補正走査透過型電子顕微鏡を駆使し、マルチフェロイック材料の強誘電性ドメインをサブオングストローム(0.1ナノメートル以下)の空間分解能で精密に評価する技術を確立しました。本成果により、最先端電子顕微鏡技術と統計的画像処理法を駆使することで材料の原子構造のみならず、電磁気構造に関しても原子分解能で直接評価することが可能になりました。本成果は、新規圧電材料の創製に不可欠な評価技術としても役立つことが期待されます。

本研究は、文部科学省グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス事業(GRENE)先進環境材料分野「低炭素社会の実現に向けた人材育成ネットワークの構築と先進環境材料・デバイス創製」の一環として行われました。本成果は2013年9月19日(米国時間。日本時間 20 日)に米国化学学会「ナノレターズ(Nano Letters)」誌のオンライン速報版で公開されました。

プレスリリース

論文情報

Takao Matsumoto, Ryo Ishikawa, Tetsuya Tohei, Hideo Kimura, Qiwen Yao, Hongyang Zhao, Xiaolin Wang, Dapeng Chen, Zhenxiang Cheng, Naoya Shibata, and Yuichi Ikuhara,
“Multivariate statistical characterization of charged and uncharged domain walls in multiferroic hexagonal YMnO3 single crystal visualized by a spherical aberration-corrected STEM”,
Nano Letters Online Edition: 2013/9/19 (GMT), doi: 10.1021/nl402158c.
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