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ナトリウムポンプのイオン選択性の解明 ナトリウムイオン結合状態のナトリウムポンプの結晶構造

掲載日:2013年12月6日

© Chikashi Toyoshima, ナトリウムイオン(Na+)結合型のナトリウムポンプの結晶構造。ナトリウム、カリウムポンプはα、βサブユニット、FXYDタンパク質からなるタンパク質複合体で、膜貫通領域に3つのナトリウム結合サイト(I-III)が同定された。

ナトリウムポンプはATPの化学エネルギーを利用し、細胞内から細胞外へナトリウムイオン(Na+)を汲み出し、同時にカリウムイオン(K+)を汲み入れるポンプ蛋白質である。すべての動物細胞に発現しており、神経興奮や心臓の拍動などの生命活動の基盤を作る極めて重要な蛋白質である。東京大学分子細胞生物学研究所の豊島近教授らのグループは、大型放射光施設SPring-8を用いたX線結晶解析によって、2009年に発表したカリウム結合状態の構造に加え、今回、ナトリウムを結合した状態のナトリウムポンプの結晶構造を高分解能で決定することに世界で初めて成功した。この結果、ナトリウムポンプは、どのようにして、細胞内により多く存在するカリウムではなく、ナトリウムを選択的に結合し運搬するのか、この目的のためにどのような特異的な構造を備えているのか等が解明された。また、ナトリウムポンプの働きを止めてしまう抗生物質オリゴマイシンとの結合様式も明らかになった。

ナトリウムポンプは200年以上前から処方されてきた強心剤ジギタリスの標的蛋白質であり、高血圧や癌、多くの神経病変にも深く関わっている。今回の構造決定は直ちに治療に結びつくものではないが、このポンプ蛋白質を制御する薬剤の開発に対し重要な基盤を与えるものである。

プレスリリース

論文情報

Ryuta Kanai, Haruo Ogawa, Bente Vilsen, Haiyan Gong, Flemming Cornelius, Chikashi Toyoshima,
“Crystal structure of a Na+-bound Na+,K+-ATPase preceding the E1P state”,
Nature 502 2013: 201-206, doi: 10.1038/nature12578.
論文へのリンク

リンク

分子細胞生物学研究所

分子細胞生物学研究所 高難度蛋白質立体構造解析センター 膜蛋白質解析研究分野 豊島研究室

Mechanism of the sodium-potassium pump revealed (2013). Phys.org. Retrieved November 12, 2013.

The mechanism of the sodium-potassium pump revealed (2013). Medical News Today. Retrieved November 12, 2013.

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