筋萎縮性側索硬化症の発症を抑制する分子をマウスで発見 NFIL3蛋白質が神経細胞を健康に維持する
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動を司る神経細胞(運動ニューロン)が変性して脱落する神経変性疾患であり、筋力低下や筋萎縮を特徴とする。有効な治療法はなく、発症すると呼吸筋麻痺により、数年で死に至る。従来より、神経細胞を保護して健康に維持する蛋白質を見つけ出し、その蛋白質を人為的に活性化することによって、神経細胞の変性を抑制して神経変性疾患の発症を抑制しようという試みが行われていた。
今回、東京大学大学院理学系研究科附属遺伝子実験施設の眞田佳門准教授の研究グループは、同大学大学院理学系研究科生物化学専攻の深田吉孝教授らの研究グル-プと共同で、神経細胞の保護を担う分子としてNFIL3という蛋白質を発見した。さらに、筋力低下などALS様の病態を示す遺伝子改変マウス(ALSモデルマウス)の神経細胞においてNFIL3蛋白質を過剰に発現させると、運動ニューロンの変性や脱落、および症状の発症が顕著に遅延することを世界で初めて見出した。
本研究成果は、神経細胞の保護に関与する重要な分子の発見にとどまらず、NFIL3蛋白質を介した神経細胞を保護する仕組みを人為的に活性化することにより、ALSなどの神経変性疾患の発症を遅延させることができることを示しており、ALSの治療および緩和のための重要な指針を提供すると期待される。
論文情報
So-ichi Tamai, Keisuke Imaizumi, Nobuhiro Kurabayashi, Minh Dang Nguyen, Takaya Abe, Masatoshi Inoue, Yoshitaka Fukada, and Kamon Sanada,
“Neuroprotective role of the basic leucine zipper transcription factor NFIL3 in models of amyotrophic lateral sclerosis”,
The Journal of Biological Chemistry, Jan 17, 2014, doi: 10.1074/jbc.M113.524389.
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