ARTICLES

English

印刷

4種の低分子化合物を用いて多能性幹細胞からの効率的な骨芽細胞の作製法を開発 無血清培地下で中胚葉を経由した段階的な誘導法

掲載日:2014年6月16日

これまで、体内のあらゆる組織に分化できる能力(多能性)と無限の増殖能を持つ多能性幹細胞から目的細胞や組織を作製するために広く用いられてきた手法には、①正確な組成が不明なもの(例-ウシ胎仔血清)を細胞の培養に使用すること、②多能性幹細胞が目的としない組織への分化を誘導しかねない胚様体(多能性幹細胞を非接着性に培養することで形成される細胞の塊)を形成すること、③誘導因子に遺伝子導入や組換えタンパク質を用いること、などによる安全性やコストに関する懸念が存在します。多能性幹細胞を用いて各種組織を作製する手法は、全て既知の成分を用い、目的としない組織への分化を抑え、さらに経済的かつ安定な低分子化合物を用いた方法が理想的です。

芽細胞に分化すると緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するマウスES細胞を、本法に従って培養すると、GFPを発現する細胞が高効率で認められる。

© 2014 Kosuke Kanke & Shinsuke Ohba.
骨芽細胞に分化すると緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するマウスES細胞を、本法に従って培養すると、GFPを発現する細胞が高効率で認められる。

東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程の菅家康介氏、同大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介特任准教授、鄭雄一教授らは、細胞の培養に組成が不明なものを用いることなく、4種類の低分子化合物のみを誘導因子として用いることにより、多能性幹細胞から中胚葉を経由して効率的に骨芽細胞(骨基質の形成を担う細胞)を作製する方法を開発しました。この方法では、経済的かつ安定な低分子化合物をはじめとして既知の成分のみを用い、さらに目的としない組織への分化を抑えるため、既存の手法の問題点が解決されると考えられます。

本法は、骨形成メカニズムの解明、骨形成性薬剤のスクリーニング、骨系統疾患の病態解明、骨再生医療の足掛かりになると期待されます。

プレスリリース

論文情報

Kosuke Kanke, Hideki Masaki, Taku Saito, Yuske Komiyama, Hironori Hojo, Hiromitsu Nakauchi, Alexander C. Lichtler, Tsuyoshi Takato, Ung-il Chung, and Shinsuke Ohba,
“Stepwise differentiation of pluripotent stem cells into osteoblasts using four small molecules under serum-free and feeder-free conditions”,
Stem Cell Reports Online Edition: 2014/5/22, doi: 10.1016/j.stemcr.2014.04.016.
論文へのリンク

リンク

大学院工学系研究科

大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻

大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 大庭・矢野・鄭研究室

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる