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光によって誘導される藻類細胞の凝集機構 バイオマス生産に応用可能な新規な光スイッチ

掲載日:2014年8月26日

藍藻類(シアノハ?クテリア)はバイオテクノロジー研究とバイオマス生産に適した微細藻類です。シアノバクテリアは植物と同じように光合成を行いますが、その反応に必須な光を感知するための高度な光受容と、その光を細胞内に伝えるシグナル伝達の機構を備えています。とくに、シアノハ?クテリオクロムという多様な光受容体群は、紫外線から赤色光までさまざまな色の光を感知することが知られていますが、そのほとんどの生理的機能は未解明でした。

提唱したSesAのシグナル伝達経路。光受容体SesAは青色光と緑色光とを感知し、青色光下でc-di-GMPを合成します。合成されたc-di-GMPはセルロースを合成するタンパク質に結合し、そのセルロース合成を活性します。合成されたセルロースが細胞の凝集を誘導します。

© 2014 Masahiko Ikeuchi.
提唱したSesAのシグナル伝達経路
光受容体SesAは青色光と緑色光とを感知し、青色光下でc-di-GMPを合成します。合成されたc-di-GMPはセルロースを合成するタンパク質に結合し、そのセルロース合成を活性します。合成されたセルロースが細胞の凝集を誘導します。

今回、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程の榎本元大学院生と池内昌彦教授らのグループはシアノハ?クテリオクロムであるSesAが、 ①青色光と緑色光を感知すること、②青色光下でサイクリックジメリックグアノシン一リン酸(c-di-GMP)というシグナル分子を合成すること、③低温、青色光下でみられる細胞凝集を引き起こすという全く新しい光受容とシグナル伝達機構を明らかにしました。

このシグナル伝達機構の理解が進めば、特定の色の光を照射することで自在に細胞の凝集を誘導できるようになり、光合成を利用したハ?イオマス生産において効率的な細胞回収法を提供できると期待されます。本成果は生化学の分野において権威のあるJournal of Biological Chemistry誌において優れた研究として選ばれました。

論文情報

Gen Enomoto, Ryouhei Nomura, Takashi Shimada, Ni-Ni Win, Rei Narikawa, and Masahiko Ikeuchi,
“Cyanobacteriochrome SesA is a diguanylate cyclase that induces cell aggregation in Thermosynechococcus”,
The Journal of Biological Chemistry Online Edition: 2014/7/24 (Japan time), doi: 10.1074/jbc.M114.583674.
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