新しいプレートは大地震を起こしやすい プレート浮力が地震サイズ分布を決める

世界の地震活動は、地域ごとに大きく異なる特徴をもつ。地震活動の重要な指標の一つに地震サイズ分布(地震の大きさ・頻度の分布)の傾き「グーテンベルグ・リヒター則のb値」がある。b値は、大きな地震と小さな地震の発生数の比を表しており、b値が小さいことは相対的に大地震が多いことを意味する。世界には大地震が多い(b値が小さい)沈み込み帯と大地震が少ない(b値が大きい)沈み込み帯があることは知られていたが、そのようなb値の違いを生む原因は明らかではなかった。
東京大学大学院理学系研究科の井出哲 教授、西川友章 修士課程大学院生らの研究グループは全世界の沈み込み帯145領域においてb値の計算を行った。その結果、新しいプレートが沈み込む地域ではb値が小さく(大地震が多い)、古いプレートが沈み込む地域ではb値が大きい(大地震が少ない)ことを示した。さらに同研究グループは、沈み込み帯の力学モデルに基づき、沈み込み帯ごとのb値の違いを、沈み込むプレートの重さの違いに起因する、プレート境界にかかる圧縮の力の大きさの違いによって説明できることを示した。
本研究によって、世界の沈み込み帯における地震サイズ分布を決定する基本的な物理メカニズムが初めて明らかとなった。この物理メカニズムに基づいて、全世界の地震リスクをより定量的に評価することが可能である。
論文情報
Nishikawa Tomoaki and Satoshi Ide,
“Earthquake size distribution linked to slab buoyancy”,
Nature Geoscience Online Edition: 2014/11/03 (Japan time), doi: 10.1038/ngeo2279.
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