γセクレターゼが基質を捕まえる、「箸」メカニズムを同定 副作用のないアルツハイマー病治療薬の開発へ
超高齢化社会を迎え、認知症は大きな社会問題となっています。認知症の多くを占めるアルツハイマー病は、凝集性の高いアミロイドβタンパク質(Aβ)が脳に老人斑として沈着することを契機に発症すると考えられています。しかしAβを産生する酵素であるγセクレターゼは他のタンパク質も切断するはたらきがあるため、単純にγセクレターゼを阻害するだけでは副作用が引き起こされることが示されていました。またγセクレターゼは酵素としても分解するタンパク質(基質)の膜貫通領域を加水分解する膜内配列切断酵素であり、どのようにして基質を認識しているかは不明でした。
今回東京大学大学院薬学系研究科の富田泰輔教授、高木(新留)穏香元大学院生、佐々木朝輝元大学院生らのグループは、γセクレターゼが膜内に存在する基質を捕まえる分子機構として、γセクレターゼの活性中心のサブユニットであるプレセニリンの細胞外に面している第一ループ領域とカルボキシ末端が、箸のように協調的に基質の細胞外領域を補まえて、活性中心の構造に取り込んでいることを示しました。
本成果は、γセクレターゼが基質の膜内配列を切断する上で基質を補まえる分子領域を世界で初めて同定したものです。この成果に基づき、特定の基質のみを切断し(基質特異性を持つ)、Aβ産生のみを抑制する、副作用のないアルツハイマー病の治療薬開発につながることが期待されます。
論文情報
Cooperative roles of hydrophilic loop 1 and the C terminus of presenilin 1 in the substrate-gating mechanism of γ-secretase", The Journal of Neuroscience: Online Edition: 2015/02/11 (Japan time) (Japan time), doi:10.1523/JNEUROSCI.3164-14.2015.
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