恋敵からメスを守るオスメダカ 三角関係を制するために必要なホルモンの発見

東京大学大学院理学系研究科の横井佐織大学院生、奥山輝大博士(現マサチューセッツ工科大学)、竹内秀明助教らと基礎生物学研究所などからなる研究グループは、メダカの三角関係(オス、オス、メス)において、オスがメスとライバルオスとの間に割り込む行動を示し、メスのそばにいながらライバルを牽制する行動(配偶者防衛行動)を示すことを発見した。さらに遺伝子工学を利用することで、このライバル牽制行動において恋敵に勝つために必要なホルモン「バソトシン」を同定し、このホルモンを合成できないメダカのオスは、正常なオスに負けてしまう傾向を見出した。また、このバソトシンホルモンを合成できないオスの、他のオスへの攻撃行動とメスへの求愛行動を調べたところ、他のオスに対する攻撃性には異常がなかった一方で、メスに対する性的な関心が低下していた。よって同性に対する対抗心の異常ではなく、異性に対する性的関心が低下していることが、このオスがライバルオスに勝てない原因になっている可能性がある。
メダカのバソトシンと同様の機能をもつホルモンは、ヒトを含む哺乳類でも存在し、バソプレッシンと呼ばれている。将来的にメダカとヒトとで共通した仕組みが見つかれば、恋の三角関係において生じる独占欲や嫉妬心などのヒトの感情の仕組みが、メダカの基礎研究からわかるかもしれない。
論文情報
An Essential Role of the Arginine Vasotocin System in Mate-Guarding Behaviors in Triadic Relationships of Medaka Fish (Oryzias latipes)", PLOS Genetics Online Edition: 2015/2/27 (Japan time), doi:10.1371/journal.pgen.1005009.
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