量子テレポーテーション心臓部のチップ化に成功 光導波回路による量子もつれ生成
現在の情報技術は飛躍的な進歩を遂げてきた実績がある一方で、これまでのように古典的な物理学の原理を用いて性能を向上させることはそろそろ限界を迎えると考えられています。量子力学の原理を応用することで、現代技術の限界を超える究極的な大容量通信(量子通信)や超高速コンピュータ(量子コンピュータ)が実現できると予測されています。その実現には、光子に乗せた量子ビットの信号を転送する量子テレポーテーションの技術を確立することが最重要課題の一つです。しかし、従来の量子テレポーテーション装置は、大きな光学定盤上に何百もの光学素子を配置して実現されており、拡張性において限界に達していました。
東京大学大学院工学系研究科の古澤明教授のグループと、イギリス・ブリストル大学のオブライエン教授、サウサンプトン大学のポリティ博士、NTT先端集積デバイス研究所は、量子テレポーテーション装置の心臓部である量子もつれ生成・検出部分の光チップ化に成功しました。この光チップでは、これまで約1平方メートルの光学定盤上に非常に多くの光学素子を配置して構成していた量子もつれ生成・検出部分を、26ミリ×4ミリ(0.0001平方メートル)のシリコン基板に微細加工したガラスの光回路により実現しました。これは実に1万分の1の縮小に成功したことになります。この成果は超大容量光通信や超高速量子コンピュータの実用化へ向けて突破口を与えるもので、拡張性の問題を一挙に解決しました。
本研究は文部科学省・先端融合領域イノベーション創出拠点の形成プログラムなどの支援のもとに行われました。
論文情報
Continuous-variable entanglement on a chip", Nature Photonics Online Edition: 2015/03/30 (Japan time), doi:10.1038/nphoton.2015.42.
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関連リンク
Centre for Quantum Photonics, School of Physics, University of Bristol