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サラダドレッシングの物理 ドロップレット型相分離の新しいメカニズムの発見

掲載日:2015年7月6日

© 2015 Ryotaro Shimizu, Hajime Tanaka.液滴の界面の色は、界面上の濃度差を表す。赤い/青い色は、それぞれの液滴に対し、高い/低い濃度差を表す。矢印は液滴の界面上の流れ場を示す。

相分離中の液滴の様子
液滴の界面の色は、界面上の濃度差を表す。赤い/青い色は、それぞれの液滴に対し、高い/低い濃度差を表す。矢印は液滴の界面上の流れ場を示す。
© 2015 Ryotaro Shimizu, Hajime Tanaka.

東京大学生産技術研究所の田中肇教授、清水涼太郎博士研究員の研究グループは、水と油の混合物でみられように、液滴が多数形成され、それらが衝突合体して成長(粗大化)するタイプの相分離(ドロップレット型)においては、液滴の規則的な運動によって相分離が進むとを明らかにしました。本成果は、これまで30年以上にわたり、この種の相分離は液滴が熱によって不規則に運動し、その結果他の液滴と偶発的に衝突することで進むという通説を覆すものです。

相分離は私たちの生活のさまざまな場面で見られる普遍的な現象で、サラダドレッシングをよく振ったあとに水と油が分離する際に見られます。液滴が成長する仕組みは、二つの液体の体積比によって異なることが知られています。特に、二つの液体の体積比が大きく小さくもない中間の場合には、液滴同士が衝突して合体することで粗大化が進むことが知られていました。

この液体の衝突と合体は、液滴の不規則な熱運動(ブラウン運動)により駆動されると長年信じられてきましたが、同研究グループは液滴の大きさに応じて、その周囲に生じる液滴の濃度の分布を反映して規則的に運動していることをシミュレーションにより明らかにしました。具体的には、大きい液滴と小さい液滴が隣り合っている場合にはそれぞれ相手に近づくように、同じ大きさの場合には遠ざかるように、規則的に運動します。この機構は、濃度拡散と流体輸送の結合の結果として捉えることができます。

本成果は、相分離が二つの液体の体積の比率によらず、常に大きいドメインが小さいドメインを吸収して成長するという決定論的な法則、すなわち弱肉強食の原理に従っていることを強く示唆しおり、非平衡過程の時間発展の法則性を示したものと言えます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Ryotaro Shimizu, Hajime Tanaka, "A novel coarsening mechanism of droplets in immiscible fluid mixtures", Nature Communications: 2015/06/16 (Japan time), doi:10.1038/ncomms8407.
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生産技術研究所 田中肇研究室

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