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大腸がんの発症に重要な長いノンコーディングRNAの発見 タンパク質のユビキチン化を阻害し大腸がん発生へ導く

掲載日:2016年2月4日

© 2016 秋山 徹UPATはエピゲノム制御因子UHRF1と結合し、β-TrCP1及びβ-TrCP2によるユビキチン化を阻害している。UPATによって安定化したUHRF1はSCD1及びSPRY4の発現を活性化し、大腸がん細胞の生存及び腫瘍形成能を制御している。

新規長鎖ノンコーディングRNA UPATと大腸における腫瘍形成の仕組み
UPATはエピゲノム制御因子UHRF1と結合し、β-TrCP1及びβ-TrCP2によるユビキチン化を阻害している。UPATによって安定化したUHRF1はSCD1及びSPRY4の発現を活性化し、大腸がん細胞の生存及び腫瘍形成能を制御している。
© 2016 秋山 徹

東京大学分子生物学研究所の谷上賢瑞助教、秋山徹教授の研究グループは、タンパク質をコードしない新規の長いRNA「UPAT」が大腸がんの腫瘍形成に必須であることを発見しました。本RNAが新たな大腸がん治療の標的分子となることが期待されます。

ヒトゲノムからは、タンパク質をコードしないノンコーディングRNA (ncRNAs) が大量に転写されています。ノンコーディングRNAは長さによって200塩基以下の短鎖ncRNAと200塩基以上の長鎖ncRNAに分けられます。長鎖のノンコーディングRNAは、短鎖ncRNAと異なり、分子ごとに異なったメカニズムで機能しています。近年、長鎖ノンコーディングRNAが発生・分化、胚発生、幹細胞性の維持や癌化などの多様な生物学的プロセスに、非常に重要な役割を果たすことが明らかとなってきました。

研究グループが発見したUPATは、新規の長鎖ノンコーディングRNAであり、エピゲノム制御因子であるUHRF1 タンパク質と結合します。UPATはUHRF1のユビキチン化を阻害し、UHRF1を分解から守っていることがわかりました。さらにUPATと結合して安定化したUHRF1は癌の生存に必要なSCD1やSPRY4の発現を活性化し、大腸がんの生存及び腫瘍形成能を制御していることを見出しました。

「今回、ユビキチン化やタンパク質分解を制御することにより癌細胞の生存、腫瘍形成能に重要な役割を果たしている長鎖ノンコーディングRNAが存在することを明らかにしました」と秋山教授は話します。「UPAT-UHRF1複合体が、がん治療の重要な標的となるのでは」と期待を寄せます。

論文情報

Kenzui Taniue, Akiko Kurimoto, Hironobu Sugimasa, Emiko Nasu, Yasuko Takeda, Kei Iwasaki, Takeshi Nagashima, Mariko Okada-Hatakeyama, Masaaki Oyama, Hiroko Kozuka-Hata, Masaya Hiyoshi, Joji Kitayama, Lumi Negishi, Yoshihiro Kawasaki, and Tetsu Akiyama, "Long non-coding RNA UPAT promotes colon tumorigenesis by inhibiting degradation of UHRF1", Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America, doi:10.1073/pnas.1500992113.
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