骨形成の新しい遺伝子制御の仕組みとその進化学的意義 骨形成に必須の転写制御因子の作動様式が明らかに
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介特任准教授らの共同研究グループは、骨形成に必須の転写制御因Sp7/osterixによる遺伝子発現制御の様子を骨芽細胞のゲノム全域にわたって調べ、Sp7/osterixの作動様式とその進化学的な意義を明らかにしました。これらの知見は、ゲノム変異がもたらす骨格系の変性疾患・先天疾患の理解、それらの治療や骨格再生におけるゲノム創薬へ貢献することが期待されます。
わたしたちの骨は骨芽細胞という細胞によって作られています。骨が作られるためには、Sp7/osterixという遺伝子発現のスイッチとして働く蛋白質が正常に機能して、骨芽細胞の形成に関わる遺伝子を正しく発現させることが必要です。これまでの研究によって、Sp7/osterixが遺伝子発現を制御する機構は、一部のゲノム領域において明らかとなっていましたが、ゲノム全領域での振る舞いは不明なままでした。
共同研究グループは、Sp7/osterixが遺伝子発現を制御する新しい機構を突き止めました。これまではSp7/osterixが直接特定のゲノム領域(GCボックス)に結合することによって、遺伝子発現を制御していること考えられていました。しかし、Sp7/osterixが別の蛋白質(Dlxホメオボックス転写因子)と結合して間接的にゲノム領域に結合して遺伝子発現を調整していることが明らかになりました。さらに、異なる生物のゲノムの解析によって、Sp7/osterix蛋白質と今回新たに発見した機構は脊椎動物に特徴的であることが分かり、骨芽細胞が現れたことに伴って獲得された機構であることが示唆されました。
「本研究は、遺伝情報から骨の設計図を作る・それをもとに病気を治す、という研究目標のマイルストーンになる成果です」と北條宏徳研究員と大庭特任准教授は話します。本成果は、2016年5月9日に米国科学雑誌「Developmental Cell」で発表されました。
本成果は、南カリフォルニア大学の北條宏徳研究員およびアンドリュー・マクマホン教授との共同研究により得られたものです。
論文情報
Sp7/Osterix is restricted to bone-forming vertebrates where it acts as a Dlx co-factor in osteoblast specification", Developmental Cell Online Edition: 2016/05/10 (Japan time), doi:10.1016/j.devcel.2016.04.002.
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