眼内悪性リンパ腫の脳への再発を著明に抑制する新しい治療法 眼局所化学療法、全身化学療法、放射線治療の三者併用が奏功

東京大学医学部附属病院の蕪城俊克准教授、田岡和城助教、山下英臣講師らの研究グループは、眼内に発生する難病である悪性リンパ腫が脳に高率に転移(播種)するのを強力に抑制する新しい治療法を見出しました。今後この治療法は、眼内悪性リンパ腫の新しい治療基準となり、この病気の予後を大きく改善することが期待されます。
眼内悪性リンパ腫は、眼球内に発生する免疫担当細胞リンパ球の悪性腫瘍で、眼の所見が眼内炎症性疾患(ぶどう膜炎)と紛らわしく、また近年その患者数が急激に増加している病気です。この病気では脳への播種が高率に起きることが問題となっており、眼内病変が発生してから29ヶ月以内に65-80%の症例で脳播種を起こします。そのため、眼内悪性リンパ腫は眼の病気の中でも最も生命予後の悪い病気とされています。
今回研究グループは、75才以下の患者の眼内悪性リンパ腫に対して、眼球内注射(メトトレキサートを注入)、全身化学療法(リツキシマブ、メトトレキサート、ビンクリスチン、プロカルバジン、シタラビンを投与)、および予防的な低線量の全脳放射線照射を組み合わせた治療法を行うことで、脳播種を4年間で12%にまで低減できたことを報告しました。本研究により積極的な全身化学療法・予防的放射線療法がこの病気の予後を大きく改善する可能性が示されました。
「眼内悪性リンパ腫は眼の病気なのに命に関わる難病であり、どう治療すべきかについては様々な議論があったが、決定打がなかった」と蕪城准教授は話します。「本研究を契機に、この病気の治療が大きく進展することを期待したい」と続けます。
論文情報
Combined intravitreal methotrexate and immunochemotherapy followed by reduced-dose whole-brain radiotherapy for newly diagnosed B-cell primary intraocular lymphoma", British Journal of Haematology Online Edition: 2017/07/12 (Japan time), doi:10.1111/bjh.14848.
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