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モノの向こうに140年間が立ち現れる東大・歴史的グッズ集|広報誌「淡青」36号より

掲載日:2018年5月8日

実施日: 2018年03月09日

モノの向こうに140年間が立ち現れる
東大・歴史的グッズ集
 

東京大学文書館では、大学史に関する資料を幅広く収集しています。様々な部局・部署、退職した教職員、卒業生やそのご家族の皆さんなどから寄せられた資料には、紙の書類ではないモノ資料も含まれます。現実に存在するモノの姿を通じて、140年の歩みを感じていただきましょう。

        
1888(明治21)年 1889(明治22)年
日本の学位記第一号 陸上運動会の銀製カップ
加藤弘之(2代総長)は、明治20年の学位令に拠り博士号を授与された最初の25人のうちの一人。同時授与者のうちには、外山正一(文学)、山川健次郎(理学)、菊池大麓(理学)といった新旧総長の顔ぶれも見える。 近代スポーツは外国人雇教師が熱心に導入。競技会としての運動会は明治20年から始まった。これは明治22年の秋季陸上運動会440ヤードレース優勝者に司法省顧問のウィリアムズ(英)が授与したカップ。
 
1890(明治23)年頃  
教育勅語と避難用の背負子  
明治23年に下賜された「教育ニ関スル勅語」は、翌年1月に当時の官立学校へ謄本が配布された。謄本といっても署名は明治天皇親筆であり、御璽が押されている。本学には本部と各分科大学宛に計7通交付されたと記録があり、2通が現存する。また、緊急時に教育勅語と御真影を搬出するためと考えられる背負子も残されている。中は金庫になっており、五七桐の家紋を照らす豆電球も備えられた作りである。使われることはあったのだろうか。
1897(明治30)年以降 1899(明治32)年以降
東京帝国大学の公印 帝大ネクタイピン

一つの公印をどのぐらいの期間使用したのかはまだ確認できていないが、この印は東京帝国大学として最後まで用いられていたもののようだ。昭和25年の第二工学部の卒業証書に同一の印影が見える。 父子2代で東京帝国大学に学んだ元学生の所持品。「帝大」は身近でもあり誇らしくもある想い出だったのだろう。
 
1913(大正2)年 1925(大正14)年以降
恩賜の銀時計 大講堂の振り鐘
 
卒業式の際に天皇陛下から優等生へ銀時計が下賜される制度は、明治32年から大正7年まで行われ、合計323名に授与された。優等生の選出基準は見つかっていないが、成績だけでなく、人物面も評価されたようである。 大講堂(安田講堂)での催事の進行表には必ず「振鈴」の指示があり、催事開始の合図としていた。広い講堂でざわついた中でも音が響くように作ったためだろう、振ると思いがけないほど大きな音がする。
1939(昭和14)年 1943(昭和18)年
一高端艇部の手ぬぐい 学徒出陣壮行会の日章旗
端艇、つまりボート競技は、戦前の高等学校・大学の学生生活で重要な位置を占めるものだった。一高は明治26年に高等商業学校(一橋大学)と共有で浅草に艇庫を設け、学内や他校との対抗戦でしのぎを削った。 昭和18年に始まった学徒出陣については、その定義、学生たちの従軍や帰還/戦死等の把握、学生たちの思いなど、実態解明も評価も一筋縄ではいかない。しかし確かなのは、学生の勉学の機会が奪われたことである。
1970(昭和45)年頃  
東大紛争時の楯とヘルメット  
 
古希世代以上は、ヘルメットを見ればどの党派かすぐにわかるかもしれない。このヘルメットと楯は、旧学生課で保管していたものだが、保管に至った経緯は不明。東大紛争から50年、客観的な分析が必要な時期である。
1980(昭和55)年頃 1993(平成5)年
教育学部学生自治会の旗 乗鞍観測所40周年記念の時計

 
大学史史料室(文書館の前身)にこの旗を含む資料一式が運び込まれたのは平成9年。すでに教育学部の学生自治会は解散しており、活動が終息していたことがわかる。モノがどういう変遷をたどったかに注目すると、社会が透けて見える。 ノーベル賞を生む宇宙線研究所の起源は昭和25年に乗鞍に建てられた小さな観測小屋だった。40周年は乗鞍観測所が設置された昭和28年を起点としたもの。
1997(平成9)年 2005(平成17)年
東京大学120周年ピンバッジ ホームカミングデイの手ぬぐい
創立120周年時、映像作成や「東京大学」展などの大きな記念事業が行われた。この小さなピンバッジ作成もその一環。 この手拭いは、新たに東大マークが制定された翌年にも販売されていた。古い銀杏マークの品はすでに珍品だったか。
2007(平成19)年 2013(平成25)年
数物連携宇宙研究機構発足記念の文鎮 観測船「弥生」竣工記念の文鎮
元職員が大切にしていたノベルティグッズ。一辺が2億光年の宇宙空間の構造が閉じこめられている。宇宙の謎の解明を目指して発足した機構は2017年に10周年式典を開催した。 「弥生」は大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの船。東日本大震災で失われた先代の後を継ぐ新「弥生」が大槌を母港に調査と復興に貢献中。
森本先生顔写真森本祥子/文
文書館准教授

東京大学文書館とは
東京大学文書館は、歴史的に重要な大学の法人文書を保存する機能と、広く東京大学関係の資料を保存する機能を、併せ持ちます。それにより、東京大学の来し方を理解し行く末をデザインするための、信頼できる情報を広く提供しています。今後、所蔵資料のデジタル化も推進しつつさらなる情報発信に努めていきます。

    
※本記事は広報誌「淡青」36号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。

 


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