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「知のプロフェッショナル」とは? |  総長室だより~思いを伝える生声コラム~第7回

掲載日:2018年3月30日

実施日: 2018年02月22日

東京大学第30代総長 五神 真

「知のプロフェッショナル」とは?
 

今回は「知のプロフェッショナル」について改めてお話ししたいと思います。この言葉は、2015年に総長に就任し、これからの東京大学はどうあるべきか、そしてそれを担う学生にどんなメッセージを伝えるべきかを検討する中で生まれました。「知識」や「知恵」ではなく「知」を選んだのは意味に広がりを持たせたいと考えたからです。知の創造に能動的に関わることに加えて、知をもって人類社会に貢献することまでも射程にいれてプロフェッショナルという姿をイメージしたのです。学生には、自らの行動に責任を持ち、知を通じて多様な人々と協力しながら社会課題の解決に貢献する人材に育って欲しいと期待しています。

こうしたメッセージは繰り返し伝えることが大切だと感じた出来事がありました。私は2017年の5月に著書『変革を駆動する大学』を出版しました。その数か月後、駒場の1、2年生10数名と、この本の内容や知のプロフェッショナルについて語る機会がありました。その時、ある学生が、「知のプロフェッショナルと言っても、自分は研究者になるつもりで東大に来たわけではないのでピンとこない」と述べたのが印象的でした。この学生は知のプロフェッショナルは研究者のことを指していると感じたのでしょう。

しかし、知のプロフェッショナルには、研究者に限らず、知を活用する人、知をもとに多くの人をつなぐ人、社会課題に知をもって対処する人など、様々な姿があります。知との関わり方にもいろんな形があってよいのです。大事なことは、与えられた知識を習得するだけの受身の知ではなく、知に積極的に関わり、新たな知を創造し、様々な人々、地域、社会を繋いで一緒に行動できる人物を目指すことです。これを繰り返し学生に伝えていきたいと思っています。

「知」という広がりのある言葉を使った意味はもう一つあります。自分なりの「知のプロフェッショナル」とは一体何かを、学生自身でも考えて欲しかったのです。私はこれまでの教員生活で、ある言葉を聞いた学生が自分なりにその意味をじっくり考え、予想以上のアウトプットを出すのを何度も見てきました。高い知力と志をもって東大の門を潜った学生たちには、言葉を自分なりに噛みしめ深めてほしいのです。それが知に積極的に関わることだと思うのです。

東大という場をどう活かして「知のプロフェッショナル」となるか、学生一人一人が自ら見出せるようサポートしていきたいと考えています。(つづく)

「学内広報」1507号(2018年2月22日)掲載



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