茂呂徹特任教授が第49回(令和6年度)井上春成賞を受賞
東京大学大学院医学系研究科 関節機能再建学講座の茂呂徹(もろ とおる)特任教授が第49回井上春成賞を受賞し、7月12日(金)に表彰式が執り行われました。
・科学技術振興機構(JST)プレスリリース
・京セラ株式会社プレスリリース
受賞理由
技術の名称
「親水性ポリマーによって潤滑性を高めた長寿命型人工股関節」
【研究者】茂呂徹(東京大学大学院医学系研究科 関節機能再建学講座)【企 業】京セラ株式会社(代表取締役社長 谷本 秀夫)
病気や骨折などで機能を失った関節を人工股関節に置き換えることで、痛みを緩和したり、歩行機能を回復したりすることを人工股関節置換術といいます。
人工股関節の運動面(関節しゅう動面)では、摩擦によって摩耗粉が生じます。患者さんの体内では、摩耗粉を異物として排除しようとする免疫の働きをきっかけに、骨を壊す破骨細胞が多く作られるようになり、人工股関節と接触している部分の骨が溶けてしまうという深刻な症状(骨溶解)を引き起こす場合があります。そのため10~15年で再手術が必要とされてきました。
今回受賞した技術では、人工股関節のライナーと呼ばれる部分の表面をMPCポリマー(細胞膜と同じ分子構造を持つリン脂質極性基を有するポリマー)で処理することによって、摩耗粉の産生とそれに伴う骨溶解を同時に抑制し、人工股関節を安全かつ長期間使用することに成功しました。
本技術は、生物の構造、機能、生産プロセスなどをヒントに新しい技術を開発してものづくりに活かす「バイオミメティック技術」を用いています。MPCポリマーによって、関節軟骨と類似した構造を構築できる医療機器として実用化に至った産学連携の成果であり、2024年現在、臨床使用数は累積約10万件におよんでいます。これらの功績が称えられ本賞が授与されました。
井上春成賞について
「井上春成(いのうえ はるしげ)賞」は、国立研究開発法人科学技術振興機構の前身の一つである新技術開発事業団の初代理事長であり、工業技術庁初代長官でもあった井上春成氏が日本の科学技術の発展に貢献した業績に鑑み、新技術開発事業団の創立15周年を記念して創設された賞です。本賞は、大学等や研究機関などの独創的な研究成果をもとにして企業が開発、企業化した技術であって、日本の科学技術の進展に寄与し、経済の発展、健康福祉の向上に貢献したものの中から特に優れたものについて、表彰技術ごとに研究者および企業が表彰されます。・井上春成賞ウェブサイト