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歴史研究の国際的トップジャーナルに論文掲載 若手研究者の国際発信力強化を本学プロジェクトが支援

掲載日:2022年1月7日

東京大学経済学研究科の山本浩司准教授が代表を務める「経済史、経営史、および歴史研究国際化のための基盤形成プロジェクト」は「歴史的思考」の価値と楽しさが広く共有される社会の実現をめざし、大学院入学からテニュア獲得後までの段階にある全国の若手歴史系研究者を主たる対象に、初めての英語発表から英文原稿の推敲と査読のノウハウ、一流国際誌への投稿、一般向け講演の技術と実践まで、国内外で最高水準の研究者に期待される成果発信の流れをシームレスに支援しています。
 
社会と経済の活性化のために不可欠であるはずの歴史的思考が先細りし、過去から学ぶ営みの基盤が失われつつある日本の現状を憂慮してきた山本准教授らは、2016年より「歴史家ワークショップ」として多彩な若手研究者支援プログラムを実施してきました。
 
日本の人文社会科学の諸分野では、数量データを多用する領域を除いては研究成果の国際発信に必要なノウハウ蓄積が進んでおらず、歴史研究でもトップジャーナルへの投稿・掲載に必要なステップは広く共有されていませんでした。
 
そこで同事業が開催してきたプログラムの一つが、英語を母語としない執筆者による英語論文の一流国際誌投稿を支援する「英文校閲ワークショップ」です。国際的査読雑誌での出版・査読経験を活かして山本准教授が開発・運営してきた同プログラムは、トップジャーナルへの投稿において欠かすことのできない論文の「学術的意義の設定方法」と「読みやすさ」、そしてその背景にある「読者心理」をより深く理解することで、最高トップレベルの論文を執筆するために必要な徹底した推敲のスキルを参加者とともに身につけることを目的としています。
 
このたび、2019年度に「英文校閲ワークショップ」で参加者と検討した安平弦司氏(日本学術振興会/武蔵大学/ユトレヒト大学)の論文が、歴史研究のトップジャーナルPast & Present誌に受理され、オンライン版 (advance access) に2021年12月13日(日本時間)に掲載されました。論文のタイトルは‘Transforming the Urban Space: Catholic Survival Through Spatial Practices in Post-Reformation Utrecht’で、紙媒体としては255号(2022年5月)に掲載予定です。
 
1952年創刊のPast & Present誌は英語圏で最も著名な総合歴史雑誌のひとつとして知られ、同誌への論文掲載に成功した研究者は、その分野の新たなリーダーとして広く認知されます。同誌での論文受理は日本に拠点を持つ歴史研究者としては前例のない快挙であり、海外の一流大学に職を得る世界中のトップ研究者たちと並ぶ安平氏の実績であるとともに、本学が実施する事業が、歴史分野において国際的に卓越した成果を生み出す「知の基盤」を提供した一例と言えます。
 
安平氏の論文の和文要旨はこちらからご覧ください
https://historiansworkshop.org/2021/12/13/yasuhira_pp/
 
今後、歴史家ワークショップ事業がさらに多くの若手研究者たちの国際的・社会的発信力強化、さらに組織や学問領域の壁を超えた人文社会科学分野全体の活性化につながることが期待されます。
    
英文校閲ワークショップを実施している歴史家ワークショップの詳細は、次のページからご覧ください。
 http://historiansworkshop.org/

論文情報

Genji Yasuhira, "Transforming the Urban Space: Catholic Survival Through Spatial Practices in Post-Reformation Utrecht," Past & Present Volume 255, Issue 1, May 2022: 2021年12月13日, doi:10.1093/pastj/gtab014.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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