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一條秀憲教授に日本学士院賞の授賞が決定

掲載日:2021年3月18日

東京大学大学院薬学系研究科の一條秀憲教授に日本学士院賞が授賞されることが、2021年3月12日の日本学士院総会において決定されました。
 
研究題目
ASKファミリーを基軸としたストレス応答機構の解明
 
氏名および現職
  • 一條 秀憲(いちじょう ひでのり)
東京大学大学院薬学系研究科教授、東京大学創薬機構長
 
授賞理由
一條秀憲氏は、1997年、酸化ストレスに応答してアポトーシス(細胞死)を誘導するタンパク質リン酸化酵素としてASK1(Apoptosis Signal-regulating kinase 1)を発見して以来、ASK1に類縁のASKファミリー分子群(ASK1, ASK2, ASK3)の機能解析を中心に、ストレスシグナルの研究分野で世界を牽引してきました。また、ASKファミリーが酸化ストレス小胞体ストレス浸透圧ストレスなどの環境変化に応答する分子メカニズムを解明するとともに、その破綻が筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経変性疾患やがん・炎症など、多様な疾患の原因になることを明らかにしました。 一條氏は、一貫して物理的・化学的ストレスの感知・情報処理・応答の分子機構の解明に従事し、常に「ストレス応答の破綻と疾患」という視点から生命科学の発展に大きく貢献してきました。同氏の研究は新たな創薬基盤創成の点でも高く評価されます。
 
【用語解説】
ASKファミリー
遺伝子の塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列の相同性が高い分子群を一括りとして分子ファミリーと呼ぶ。哺乳類のASKファミリーにはそれぞれが異なる遺伝子にコードされたASK1、ASK2、ASK3の3つの分子が存在し、類似の構造を持ちながらもストレス応答において機能的な多様性を発揮している。
 
ストレスシグナル
細胞は周囲の環境変化を感知し、細胞内の情報伝達(=シグナル)を介して適切な細胞応答を導く。ストレスシグナルとは、紫外線、熱、重力等に代表される細胞傷害性の刺激(=ストレス)に応答・適応するための情報伝達経路のこと。
酸化ストレス
生体内の様々な分子は酸化されることによってその機能を変化させるが、一般に強い酸化作用は分子に対して有害な影響を与えるため、これを酸化ストレスという。酸化ストレスを与える代表的な物質として活性酸素がある。
 
小胞体ストレス
小胞体は、細胞外へ分泌されるタンパク質や膜貫通タンパク質の折りたたみや成熟化を担う細胞内オルガネラである。遺伝子の異常や様々な環境要因により、小胞体の中で正常な高次構造に折りたたまれなかったタンパク質が小胞体内に蓄積する場合がある。一般に変性タンパク質の小胞体内蓄積は細胞にとって有害な作用を発揮するため、これを小胞体ストレスという。
 
浸透圧ストレス
細胞膜は、水などの低分子物質は比較的自由に通過できるものの、タンパク質などの高分子物質は通過しにくい半透膜としての性質を持っている。細胞の内外で溶媒濃度が異なる場合、濃度の低いほうから高いほうへ向かって水分子が移動するために圧がかかり、これを浸透圧という。強い浸透圧は細胞にとって有害な作用を発揮するため、これを浸透圧ストレスという。
 
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
運動神経が特異的に障害される進行性の神経変性疾患。手足、喉、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せて力がなくなる難病であり、現在までのところ対症療法以外に明確な分子基盤に基づく治療法が存在しない。
 
日本学士院賞
明治43年に創設され、学術上特にすぐれた論文、著書その他の研究業績に対して授賞される。

日本学士院賞授賞の決定について(日本学士院ウエブサイト)

 

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