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開催報告:「災害デジタルアーカイブの最前線」 ~能登半島地震から1年・石川県デジタルアーカイブキックオフイベント~

掲載日:2025年1月20日


浅野大介・石川県副知事にデジタルアーカイブを説明する渡邉英徳教授

2025年1月は、阪神・淡路大震災から30年、能登半島地震から1年を迎える節目となります。1月末に予定されている石川県事業「能登半島地震アーカイブ(仮称)」公開を記念して、「災害デジタルアーカイブの最前線」~能登半島地震から1年・石川県デジタルアーカイブキックオフイベント~を、石川県立図書館にて開催しました。
 
災害の実相を記録して未来の備えに活かす「デジタルアーカイブ(DA)」の意義と利活用の可能性を議論し、今後の発展の出発点となることを企図して開催されたイベントです。株式会社QUICKと情報学環・渡邉英徳研究室の共同研究「災害地域の多元的デジタルアーカイブズの研究開発」および東京大学とNHKの包括連携協定(東京大学創立150周年記念事業)の一環として実施されました。

本イベントは[1]最新技術を駆使した災害DAの展示、[2]DAの今後の発展と活用を多角的に論じるシンポジウム、[3]市民参加のDA構築技術の習得をめざしたワークショップ、の三つの要素で構成されています。降雪のなか多数の来場者があり、展示・シンポジウム・ワークショップのいずれもほぼ満席となりました。
 
[1]最新技術を駆使した災害DAの展示
 図書館のエントランスホールでは、災害デジタルアーカイブの展示が行われました。能登半島地震と豪雨災害をメインテーマとし、渡邉英徳研究室、NHK、読売新聞が出展。フォトグラメトリ、3Dガウシアン・スプラッティング、衛星画像・航空写真、VR・ARなどの最先端技術を駆使した取り組みや、発災当時の紙面が紹介されました。NHKと東京大学のコラボレーションによる、熊本地震など過去の災害の3D可視化コンテンツも展示されました。
 

NHKとのコラボレーションによる熊本地震の被害状況の可視化


読売新聞とのコラボレーションによる輪島朝市の被害状況の可視化

これらの技術を活用することで、高精度な被災地の再現、災害状況のすみやかな記録と発信が可能となり、復興支援や防災教育、あるいは災害の即時対応への応用が期待されています。展示会場は常に多数の来場者で賑わい、石川県副知事の浅野大介氏、能登半島地震で被災されたかたも訪れ、災害記憶の継承や、今後の災害対応に向けた可能性などについて、ゆたかな対話が生まれました。

多数の来場者で賑わう展示会場
 
[2]DAの今後の発展と活用を多角的に論じるシンポジウム


登壇者によるプレゼンテーション

浅野大介氏をはじめ、計9名の登壇者がそれぞれの視点から発表を行いました。アカデミアや地方行政、メディア、民間企業など多岐にわたる分野の専門家が、ボトムアップかつリアルタイムなデジタルアーカイブの現状・活用可能性について、事例を交えながら議論しました。
 
パネリスト
- 浅野 大介(石川県 副知事)
- 小松 尚平(東京大学 特任研究員)
- 清水 雅楽乃(アステナホールディングス株式会社 常務執行役員)
- 上甲 鉄(読売新聞写真部 記者)
- 鈴木 聡(NHKメディアイノベーションセンター)
- 素都 明子(石川県 知事室戦略広報課 課長)
- 羽生田 文登(Code for Noto 代表)
- 渡邉 英徳(東京大学 教授)
 
挨拶
- 浅野 大介(石川県 副知事)
- 髙見 信三(株式会社QUICK 代表取締役社長)

来場者はアンケートツールを活用して意見を共有し、シンポジウムのテーマについて直接質問やコメントを行うことができました。隣席の来場者どうしのセッションタイムも設定し、会場全体が議論に参加するかたちで、活発な意見交換が行われました。
 
[3]市民参加のDA構築技術の習得をめざしたワークショップ
 
デジタルマップ作成(株式会社Eukarya・渡邉英徳研究室)

災害デジタルアーカイブを利用した体験型のワークショップも実施されました。自発的なDA構築と活用の技術習得のため、石川県の市民を対象に継続的に行なうワークショップ・シリーズの第1回として位置付けられます。参加者は自らのパソコンで、災害の実態を人々にわかりやすく伝える手法を実践的に学びました。
 
能登半島地震のデータを活かしたデジタルマップ作成(株式会社Eukarya・渡邉英徳研究室)・3Dガウシアン・スプラッティングによるスキャン体験(NHK)・スマートフォンで遠隔地の被災状況を確認できるARアプリ作成(渡邉英徳研究室)のメニューが用意されました。いずれもほぼ満席となり、参加者も活発に発言しながら、熱心に取り組んでいました。
 

Dガウシアン・スプラッティングによるスキャン体験(NHK)


ARアプリ作成(渡邉英徳研究室)

 

イベントの意義

 このイベントは、能登半島地震から1年、阪神・淡路大震災から30年という歴史的な節目に開催され、災害の記録を未来に生かすための新たな一歩を踏み出す機会となりました。最新のデジタルアーカイブ技術を活用することで、ほぼリアルタイムな情報収集と発信ができるようになります。したがって、過去の災害の記録を未来に継承すると同時に、これから起きる災害に即時対応することも可能になってきます。本イベントでは、その可能性と社会的な意義が改めて確認されました。今後も、継続して開催していく予定です。

 

イベント概要

- 「災害デジタルアーカイブの最前線」~能登半島地震から1年・石川県デジタルアーカイブキックオフイベント~

- 場所:石川県立図書館
- 日時:2025年1月15日(水) 10:00~17:00
- 主催:東京大学大学院情報学環(渡邉英徳研究室、講談社・メディアドゥ新しい本寄付講座)、株式会社QUICK
- 後援:石川県、NHK金沢放送局、読売新聞社

論文情報

渡邉 英徳, "能登半島地震の(リアルタイム)デジタルアーカイブ," デジタルアーカイブ学会誌 8 巻、4 号、p. 152-156: 2024年12月20日, doi:https://doi.org/10.24506/jsda.8.4_152.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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