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東京大学東洋文化研究所アジア研究叢書を創刊 アジアの知を世界の知へ!

掲載日:2024年9月25日

東京大学 東洋文化研究所は、英文によるアジア研究書シリーズであるThe University of Tokyo Studies on Asia『東京大学東洋文化研究所アジア研究叢書』をSpringerからオープン・アクセスで創刊しました。 

The University of Tokyo Studies on AsiaUTSA

日本のみならず世界の多くの地域で、高等教育における英語で行う「アジア学」の講義には欧米発の教材が用いられてきました。世界の人々がアジアを正しく理解するためには、欧米発の学問体系に加え、「アジアにおけるアジア研究」の成果に基づいた教材が必要です。
 
しかし、日本のアジア研究は、領域によっては日本語や現地語による成果発信が重視されています。このため、日本におけるアジア研究には、多くの優れた成果があるにも拘わらず、英語による発信が手薄になっていました。
 
そこで、日本のアジア研究の中核を担う東京大学東洋文化研究所は、アジアでなされている優れたアジア研究の成果を英語で発信して、広く世界の研究者や学生に提供するThe University of Tokyo Studies on Asia(UTSA)『東京大学東洋文化研究所アジア研究叢書』を創刊しました。
 
UTSAは、東洋文化研究所及び世界の著名な研究者らがアジアのアジア研究成果を選考し、英訳、編集して無料でダウンロードできるオープン・アクセスとしてSpringerからシリーズ出版するものです。これにより、欧米を軸に積み重ねてきたこれまでの学問体系や蓄積だけではたどり着けなかった新たな視角を打ち出し、アジア研究のニュー・スタンダードの確立に挑戦します。
 
本シリーズは、主に東洋文化研究所基金に寄せられた寄付金によって制作されているため、無料でダウンロードでき、東大発の質の高い「アジア学」教育を誰でも、どこにいても受けることが可能です。創刊1冊目のThe Semantics of Development in Asiaにはすでに、11,000以上のダウンロードがあり、学術的インパクトの高い、社会からの要望に応えた図書であることを明示しています。2冊目となるAsia Risingも、刊行からわずか2週間で6,000ダウンロードを超え、アジアの歴史と国際関係を約30名の著者によって体系的にまとめた教科書、参考書として広く利用されることが期待されます。今後も刊行を継続することで、日本の人文学の国際的存在感を大いに高めることに貢献します。
 
アジア研究80年の蓄積に裏付けられた東京大学東洋文化研究所が、今後も継続的に「アジアに根ざしたアジア研究」を無料で世界の研究者や若者へ発信し、平等な学びの機会を提供できるよう、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。 

シリーズ紹介

 

日本ではSDGsが流行っていますが、そもそも、「持続可能性」や「開発」という概念を私たちはどのように理解しているのでしょうか。本書では、「人づくり」「現場主義」「国際貢献」といった英語になりにくい日本の開発関係概念を取り上げ、それらが英訳に馴染まない理由や、新しい意味をおびて他国に輸出された事例の検討を通じて、開発概念の越境可能性を論じてみました。これまで、国際開発の分野は、ガバナンスやアドボカシーといった欧米由来の諸概念の独壇場でした。しかし、考えてみると、それぞれの国や地域には固有の開発関連概念が存在しています。本書は、日本の概念を体系的に拾い上げ、それを英語で論じ直すことを通じて、開発分野の言説空間における権力関係を問題にします。本書が、これまで近代化や開発の対象になってきた非英語圏における土着概念の見直しに向けた運動の一助になることを願っています。
 

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  アジアの歴史や国際関係は、今やアジア域内に留まらず世界各地で教えられています。発展するアジアへの関心が高まっていますが、大学で一般的に指定される教科書は欧米の学者によって書かれたものが中心です。それらは植民地化以前のアジアの発展や、脱植民地化、冷戦のアジアにおける文脈よりもグローバルな力学を重視する傾向がありました。また、英語での文献を挙げることが多く、アジア現地の資料や研究成果を十分に紹介するものでもありません。こうした問題を克服するため、アジア発のアジア研究の手引きを作成しようとしたのが本書です。日本の近代化や拡大がアジアに与えた影響、また20世紀後半における民主化や地域主義の高まり、そして安全保障の複雑化にもそれぞれ章を割いています。本書によって、アジアに関心を持つ域内外の多くの人々が、アジアにおける研究成果を踏まえて、出来事のローカルな文脈やそれとグローバルとの連関を確認し、多角的に研究を深めて欲しいと願っています。

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