史料編纂所と沖縄県立博物館・美術館との研究協定締結について -新システムから絵図画像をWeb公開-

<記者会見の様子:研究協定の締結後に握手を交わす尾上陽介氏(東京大学史料編纂所所長、右)と里井洋一氏(沖縄県立博物館・美術館館長、左)>
このたび、沖縄県立博物館・美術館が所蔵する「琉球国図」(りゅうきゅうこくず)の画像を、東京大学史料編纂所が所蔵する「海東諸国紀」(かいとうしょこくき)と連携させた新たなシステムを構築し、広くWeb上で公開することになりました。これに関連して、2025年3月25日に沖縄県立博物館・美術館と史料編纂所とは研究協定を結び、あわせて記者会見を行いました。
この「琉球国図」は1696年に製作されたものですが、「海東諸国紀」の所収図と記載内容がよく似通っていることから、共通する原図から派生した絵図であると考えられています。「海東諸国紀」は、1471年に朝鮮で編纂された海東諸国(日本国・琉球国)についての研究書で、全部で10点の絵図が所収されています。このうち、「琉球国図」と近似している九州・琉球部分は、1453年に博多商人から朝鮮王朝に献上された絵図をベースにしていると考えられます。「琉球国図」と「海東諸国紀」の所収図は、中継貿易で繁栄する琉球や室町時代の日本など、15世紀の様子を伝える貴重な地図資料ではあるのですが、ベースになった原図が発見されていないため、2つの絵図の詳細な比較・検討が必要になっていました。
そこで史料編纂所では、沖縄県立博物館・美術館と研究協定を結び、「琉球国図」の画像データの提供を受け、2つの絵図を一体的に操作できる「15世紀の日本図・琉球図デジタルアーカイブ」を構築しました。このアーカイブでは、単に画像のみを表示する従来の方法とは異なり、画像データを構造化することで、書かれた文字の検索、現代地図との照合などを行える機能を盛り込んでいます。さらに今回は、2つの画像データを連携させて操作できるシステムを新たに開発しました。このシステムを用いて他機関の所蔵史料を公開するのは、史料編纂所にとって初めての試みになります。簡単にスマートフォンからも操作できるデジタルアーカイブは、利便性が高く、一般の方や学校教育の場などの利用が期待されます。
3月25日に開催された記者会見では、里井洋一(沖縄県立博物館・美術館館長)と、尾上陽介(史料編纂所所長)との間で研究協定の調印が行われるとともに、今後、より多くの方々に絵図に親しんでいただくきっかけとして、デジタルアーカイブが大きな役割を果たすことを期待する旨が述べられました。
今回のデジタルアーカイブは、地域と連携しながら、大学での研究成果を社会に還元する仕組みの一つになります。史料編纂所では、こうした取り組みを今後も続けていく予定です。
<15世紀の日本図・琉球図デジタルアーカイブ検索画面イメージ>