チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)大口径望遠鏡1号基 完成記念式典を開催、試験運転を開始 スペイン・カナリア諸島のラ・バルマ島で
超高エネルギーのガンマ線天体を観測する次世代望遠鏡であるチェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)大口径望遠鏡1号基が、スペイン・カナリア諸島ラ・パルマ島のCTA北サイトに完成し、10月10日午後(日本時間の10日夜)に、日本を含む各国の関係者200人以上が出席して完成記念式典が開かれ、式典終了後、試験運転が開始されました。CTA計画は国際共同研究プロジェクトであり、ガンマ線天文学を飛躍的に推し進め、高エネルギー宇宙物理学の世界に革命をもたらすだけでなく、天文学や素粒子物理学の幅広い分野にも大きな貢献ができると見込まれています。
ラ・パルマ島のロケ・ムチャチョス天文台に完成した大口径望遠鏡
完成記念式典に関係国から200人以上が出席
CTAが捉えようとしているのは、大気中に突入したガンマ線による空気シャワーが放つチェレンコフ光です。従来の観測装置では、宇宙の誕生から66億年後の宇宙しか観測できませんでしたが、感度を10倍に向上させ、観測可能なエネルギー領域を20GeV-300TeV に拡大し、宇宙誕生後16億年の若い宇宙の姿を見ることができるように計画されています。これにより、1000個を超える超高エネルギーガンマ線天体が新たに発見され、宇宙線の起源と生成機構の解明や、プラッックホール、中性子星近くの物理現象の解明などに役立つことが期待されます。
使われる望遠鏡は、観測可能なエネルギー領域が異なる大口径(直径23m)、中口径(同12m)、小口径(同4m)の三種類で、スペインのカナリー諸島ラ・パルマ島に北半球サイト、チリのパラナルに南半球サイトを整備し、大口径8基、中口径40基、小口径70基の計118基を建設する計画です。世界31カ国から1,400名を超える研究者が参加しており、日本でも2009年にCTA-Japanコンソーシアムが結成され、東京大学、青山学院大学、茨城大学、大阪大学、北里大学、京都大学、近畿大学、熊本大学、高エネルギー加速器研究機構、甲南大学、埼玉大学、東海大学、東北大学、徳島大学、名古屋大学、広島大学、宮崎大学、山形大学、山梨学院大学、理化学研究所、立教大学、早稲田大学の研究者や大学院生127名が参加しています。
世界31カ国から1400人以上が参加、CTA-Japanに22機関・127名が参加
大口径1号基はCTA計画で実用化される最初の望遠鏡で、日本、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスの国際共同研究で設計・建設が行われてきました。建設は2015年10月から始まり、2017年1月にコンクリート製の土台が完成。支柱や巨大な皿状の構造、カメラを設置するためのアームなどが相次いで設置され、2018年2月にほぼ完成しました。さらに、8月までの間に198枚の分割鏡が取り付けられ、9月下旬に鏡に反射したチェレンコフ光を捉える高性能カメラも設置され、試験運転の準備が着々と進められてきました。
記念式典は現地時間の10日午後、関係者200人以上が参加し、カナリー宇宙物理学研究所(IAC)のロケ・デ・ロス・ムーチャチョス天文台内のCTA北サイトで行われ、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長、CTA大口径望遠鏡研究責任者の手嶋政廣教授、東京大学の羽田正理事・副学長のほか、ラ・パルマ島のAnselmo Pestana大統領、スペイン政府のPedro Duque科学大臣らが挨拶を行いました。
200人以上が出席し、完成した望遠鏡の直下で開かれた完成記念式典
Carmen Vela Omio・前国務長官(左端)も加わり、1号基の完成を記念して行われたテープカット
CTA直下の式典で、羽田理事・副学長、梶田所長、手嶋教授が挨拶
手嶋教授は「我々はMAGIC, HESS, VERITASから多くのことを学び、さらに改良を加えることにより、この大口径望遠鏡を開発、建設してきました。これらの改良により、我々は現在の望遠鏡と比べて一桁高い感度を達成しようとしています。本日我々は1号基の完成を祝っていますが、さらに3台の望遠鏡を3年で建設しなければなりません。引き続き、皆様の力強いサポートの協力、努力をお願いいたします」と話しました。
梶田所長は「多くの日本の研究者、技術者、学生らが国際共同研究の現場で重要な役割を果たし、大口径望遠鏡の建設を進めているのを目の当たりにして、大変嬉しく思います。ここ数年、マルチメッセンジャー天文学が提唱されており、CTAも間違いなく、ニュートリノ、重力波、宇宙線の観測とともにその重要な一角を担うことになるだろうと確信しています。それが宇宙の神秘を解き明かすことにつながるのです」とコメントしました。
完成記念式典で挨拶する羽田理事・副学長
式典後に記念撮影に応じる梶田所長とスペイン科学大臣(中央右)ら(名古屋大・奥村暁さん撮影)
羽田理事・副学長は「ドイツ、スペイン、日本など多くの国がそれぞれに貢献し、このような美しい望遠鏡を完成させることができたことは大変すばらしいことです。その中で、日本の研究者や学生たちが国際的な舞台で重要な役割を果たしているのを見て、嬉しく思っています。スペインと日本は今年11月、外交関係樹立150周年を迎えますが、経済だけではなく学術でも交流が進んでいることは大変喜ばしいことです。残る3基の大口径望遠鏡の建設も順調に進み、素晴らしい歴史的な発見が実現することを強く願っています」とコメントしました。
完成記念祝賀会で、日本とドイツの6企業に感謝状を贈る
同日夕方には、ラ・パルマ市内のホテルで、CTA大口径望遠鏡完成記念祝賀会が開かれ、CTAの設計・建設にご尽力をいただいた日・独の六つの企業に、梶田所長から感謝状が贈られました。感謝状を受けたのは、富士通、浜松ホトニクス、日立システム、三光精衡所、ジーテック(G-Tech)とドイツ企業のMERO TSKです。
データ解析用のコンピータシステムを担当する富士通は山本正已・取締役会長が出席し、「CTAでは高地などの過酷な環境に耐える高い性能を求められていますが、当社はすばるやアルマの望遠鏡、宇宙線研究所ともスーパー・カミオカンデのシステムなどで豊富な経験を有しています。CTAの今後のさらなる展開に、ぜひ協力させて頂きたいと思います」と話しました。
ラ・パルマ島のロケ・ムチャチョス天文台に完成した大口径望遠鏡
完成記念式典に関係国から200人以上が出席
CTAが捉えようとしているのは、大気中に突入したガンマ線による空気シャワーが放つチェレンコフ光です。従来の観測装置では、宇宙の誕生から66億年後の宇宙しか観測できませんでしたが、感度を10倍に向上させ、観測可能なエネルギー領域を20GeV-300TeV に拡大し、宇宙誕生後16億年の若い宇宙の姿を見ることができるように計画されています。これにより、1000個を超える超高エネルギーガンマ線天体が新たに発見され、宇宙線の起源と生成機構の解明や、プラッックホール、中性子星近くの物理現象の解明などに役立つことが期待されます。
使われる望遠鏡は、観測可能なエネルギー領域が異なる大口径(直径23m)、中口径(同12m)、小口径(同4m)の三種類で、スペインのカナリー諸島ラ・パルマ島に北半球サイト、チリのパラナルに南半球サイトを整備し、大口径8基、中口径40基、小口径70基の計118基を建設する計画です。世界31カ国から1,400名を超える研究者が参加しており、日本でも2009年にCTA-Japanコンソーシアムが結成され、東京大学、青山学院大学、茨城大学、大阪大学、北里大学、京都大学、近畿大学、熊本大学、高エネルギー加速器研究機構、甲南大学、埼玉大学、東海大学、東北大学、徳島大学、名古屋大学、広島大学、宮崎大学、山形大学、山梨学院大学、理化学研究所、立教大学、早稲田大学の研究者や大学院生127名が参加しています。
世界31カ国から1400人以上が参加、CTA-Japanに22機関・127名が参加
大口径1号基はCTA計画で実用化される最初の望遠鏡で、日本、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスの国際共同研究で設計・建設が行われてきました。建設は2015年10月から始まり、2017年1月にコンクリート製の土台が完成。支柱や巨大な皿状の構造、カメラを設置するためのアームなどが相次いで設置され、2018年2月にほぼ完成しました。さらに、8月までの間に198枚の分割鏡が取り付けられ、9月下旬に鏡に反射したチェレンコフ光を捉える高性能カメラも設置され、試験運転の準備が着々と進められてきました。
記念式典は現地時間の10日午後、関係者200人以上が参加し、カナリー宇宙物理学研究所(IAC)のロケ・デ・ロス・ムーチャチョス天文台内のCTA北サイトで行われ、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長、CTA大口径望遠鏡研究責任者の手嶋政廣教授、東京大学の羽田正理事・副学長のほか、ラ・パルマ島のAnselmo Pestana大統領、スペイン政府のPedro Duque科学大臣らが挨拶を行いました。
200人以上が出席し、完成した望遠鏡の直下で開かれた完成記念式典
Carmen Vela Omio・前国務長官(左端)も加わり、1号基の完成を記念して行われたテープカット
CTA直下の式典で、羽田理事・副学長、梶田所長、手嶋教授が挨拶
手嶋教授は「我々はMAGIC, HESS, VERITASから多くのことを学び、さらに改良を加えることにより、この大口径望遠鏡を開発、建設してきました。これらの改良により、我々は現在の望遠鏡と比べて一桁高い感度を達成しようとしています。本日我々は1号基の完成を祝っていますが、さらに3台の望遠鏡を3年で建設しなければなりません。引き続き、皆様の力強いサポートの協力、努力をお願いいたします」と話しました。
梶田所長は「多くの日本の研究者、技術者、学生らが国際共同研究の現場で重要な役割を果たし、大口径望遠鏡の建設を進めているのを目の当たりにして、大変嬉しく思います。ここ数年、マルチメッセンジャー天文学が提唱されており、CTAも間違いなく、ニュートリノ、重力波、宇宙線の観測とともにその重要な一角を担うことになるだろうと確信しています。それが宇宙の神秘を解き明かすことにつながるのです」とコメントしました。
完成記念式典で挨拶する羽田理事・副学長
式典後に記念撮影に応じる梶田所長とスペイン科学大臣(中央右)ら(名古屋大・奥村暁さん撮影)
羽田理事・副学長は「ドイツ、スペイン、日本など多くの国がそれぞれに貢献し、このような美しい望遠鏡を完成させることができたことは大変すばらしいことです。その中で、日本の研究者や学生たちが国際的な舞台で重要な役割を果たしているのを見て、嬉しく思っています。スペインと日本は今年11月、外交関係樹立150周年を迎えますが、経済だけではなく学術でも交流が進んでいることは大変喜ばしいことです。残る3基の大口径望遠鏡の建設も順調に進み、素晴らしい歴史的な発見が実現することを強く願っています」とコメントしました。
完成記念祝賀会で、日本とドイツの6企業に感謝状を贈る
同日夕方には、ラ・パルマ市内のホテルで、CTA大口径望遠鏡完成記念祝賀会が開かれ、CTAの設計・建設にご尽力をいただいた日・独の六つの企業に、梶田所長から感謝状が贈られました。感謝状を受けたのは、富士通、浜松ホトニクス、日立システム、三光精衡所、ジーテック(G-Tech)とドイツ企業のMERO TSKです。
データ解析用のコンピータシステムを担当する富士通は山本正已・取締役会長が出席し、「CTAでは高地などの過酷な環境に耐える高い性能を求められていますが、当社はすばるやアルマの望遠鏡、宇宙線研究所ともスーパー・カミオカンデのシステムなどで豊富な経験を有しています。CTAの今後のさらなる展開に、ぜひ協力させて頂きたいと思います」と話しました。
完成記念祝賀会に出席し、感謝状を受けた企業関係者との記念撮影
式典の詳しい様子や写真・動画は以下のサイトのトピックスにアップロードされています。