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小柴昌俊先生を偲ぶ会を開催 弟子たちが思い出を語る 東京大学本郷キャンパス・小柴ホールで

掲載日:2021年11月9日

 カミオカンデ計画を推進してニュートリノ天文学を開拓し、2002年ノーベル物理学賞を受賞するとともに、多くの研究者を育てた東京大学特別栄誉教授、小柴昌俊先生が亡くなってから一周忌を迎えるのを受け、東京大学の関係者が主催する「小柴昌俊先生を偲ぶ会」が2021年11月7日、東京大学本郷キャンパスの理学部1号館「小柴ホール」で開催されました。追悼講演では、お弟子さんたちが、小柴先生の生前の活躍と功績、さらにそのお人柄について語り合いました。COVID-19の感染拡大防止のため会場は関係者だけでしたが、偲ぶ会のようすはYouTubeで生中継され、最大365人が同時視聴しました。
 
壇上の祭壇に飾られた小柴昌俊先生の遺影

 偲ぶ会の実行委員会(委員長、五神真・前総長)は、理学系研究科・理学部、素粒子物理国際研究センター、宇宙線研究所によって組織され、浅井祥仁センター長・教授が中心となって準備を進めてきました。また、当日の司会は国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の横山広美教授が務めました。

 

司会を務めた横山広美教授


 偲ぶ会の冒頭、1分間の黙祷が捧げられた後、実行委員長を務める五神真・東京大学前総長が「小柴先生がカミオカンデで発案された『大きな水タンクと大口径光電子増倍管によりニュートリノ事象をとらえる』という実験は、素粒子物理学にとどまらずニュートリノ天文学という新しい学問の誕生に繋がりました。当時私は物理学科の学部学生でしたが、その独創的で壮大なアイディアに圧倒されたことを鮮明に覚えています」などと述べると、藤井輝夫・東京大学総長も「小柴先生が切り拓いてくださった新しい学問分野や我が国の学術の国際化という潮流は、今日活躍する研究者たちの大きな手本となり、世界のアカデミアのネットワークのなかで新たな価値や未来を創り出してきました。小柴先生をはじめとする先輩方の挑戦が築いてきた東京大学を、私は総長として引き継ぐだけでなく、さらに発展させていく所存です」とあいさつしました。
 
 
開会のことばを述べる五神真・前総長とあいさつする藤井輝夫総長

 
 また、教え子の一人である宇宙線研究所の梶田隆章所長*は、録音メッセージで弔辞を寄せ、「常に研究の卵を2つや3つ温めておきなさい、そしてその卵がかえって、実際に研究を始める時期を常に考えていなさい」「我々の研究は、国民の血税でやらせてもらっているんだ、1円たりとも無駄にするな」という小柴先生の語録を紹介しつつ、大学院生の時に経験したカミオカンデ実験の時の思い出にも触れ、「小柴先生、厳しくも親身なご指導と、たくさんの温かい思い出をありがとうございました。偲ぶ会の開催にあたりまして、先生のすべての教え子や関係者の皆様ととともに、あらためて先生のご冥福を心からお祈り申し上げます」と結びました。
 
*当日はやむをえない事情のため欠席しました。
 
 追悼講演では、小柴研究室の第1期生だった山田作衛・東京大学名誉教授、高エネルギー加速器研究機構名誉教授が「小柴先生が撒いた研究の種–初期の小柴研究室–」▷第8期生の小林富雄・東京大学名誉教授が「最高エネルギー加速器を用いた国際共同実験の発展」▷第16期生の梶田所長が「小柴先生とカミオカンデ」(中畑副所長が代理講演)▷第17期生の中畑雅行・宇宙線研究所副所長が「スーパーカミオカンデ、そしてハイパーカミオカンデ」▷小柴研究室の助手だった鈴木厚人・高エネルギー加速器研究機構前機構長、岩手県立大学学長が「小柴先生が追い求めたもう一つの夢:国際リニアコライダー(ILC)」▷第11期生の駒宮幸男・素粒子物理国際研究センター前センター長、東京大学名誉教授、早稲田大学上級研究員が「小柴先生から学んだこと–素粒子から宇宙–」と題して講演し、小柴先生とのそれぞれの思い出を披露しました。
 

       追悼講演のようす。左上から時計回りに、山田作衛・東京大学名誉教授、
小林富雄・東京大学名誉教授、中畑雅行・宇宙線研究所副所長、
鈴木厚人・岩手県立大学学長、駒宮幸男・東京大学名誉教授


 この中で、小林富雄・東京大学名誉教授は、小柴先生が若い頃、作曲家を目指すほど音楽が好きだったことを明かし、小柴先生の遺影の前でクラリネットでモーツァルトによる「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を演奏し、冥福を祈る場面もありました=写真左。
 
 最後に小柴先生の長男である小柴俊・香川大学創造工学部教授が「生前、父は華やかなことが好きで、よく自宅に学生だった皆様を招き、パーティーをしたり、クォーク会でお会いするのが大好きでした。今日ここに多くの皆様にお集まり頂いたことは、父にとっては大変嬉しいことだったと思います。先に旅立たれました折戸周治先生、戸塚洋二先生、須田英博先生らと一緒に、この場を見て、喜んでいることと思います。改めてここにご参列の皆様、ご視聴の皆様に厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました」とお礼の言葉を述べました。
 

お礼のことばを述べる長男の小柴俊・香川大学教授


偲ぶ会の終了後にZoomで開かれた記者会見のようす

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