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第4回「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」を開催

掲載日:2019年12月23日

2019年11月30日 (土) カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と物性研究所、宇宙線研究所の主催により、物理を学ぶ女子学部生及び女子大学院生の支援を目的に「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」をKavli IPMU棟 (東京大学柏キャンパス) で開催し、17名の参加がありました。本イベントは、物理学科出身の様々な講師の方をお招きしキャリアパスを提示すると共に、参加者同士のネットワーク作りや物理学分野 (素粒子・原子核、宇宙・天文、物性、物理工学) の魅力を伝える機会として行われたもので、今年が第4回目となります。

最初に森初果物性研究所所長の挨拶があり、講演に移りました。1人目の講演者は、キオクシアホールディングス株式会社で広報・企画業務を行っている徳永千恵子さんでした。徳永さんは、「人生100年時代のキャリア形成を考える」と題して講演。現在携わっている広報や企画業務の概要紹介に加え、研究職からの転換や転職といった経験、仕事と育児等のバランスを周囲の協力を得ながらどのように図っている等を説明しました。特に、社内における物理学科出身女性を対象に集計したアンケート結果を紹介。物理それ自体の内容が仕事に役立っているという回答に加え、物理を学んだことで得られた論理的な考え方そのものや、実験・研究のプロセス等が仕事に役立っている、等という回答が多く得られていることを参加学生に紹介しました。

2人目の講演者は、筑波大学システム情報系社会工学域助教の佐野幸恵さんで、「すべてはつながりから始まる」と題して講演しました。佐野さんにとって重要な出会い (繋がり) となった、大学の物理学科の同級生とのエピソードを紹介。特に、物理学を修士課程で一旦修了した後、民間企業でシステム開発に従事していたものの、キャリアへの迷いが生じていた際、同級生は良き相談相手として自身の支えとなったこと。そして、博士課程へ進学した後、社会経済物理・ネットワーク科学の研究者として研究に従事することになった経緯を紹介しました。自身が現在研究しているネットワーク科学の研究紹介も交えつつ、いかに人との繋がりが、社会においてもキャリを築く上でも重要な要素となりうるかを強調。今回のイベントをそうした機会として活用して欲しいとのメッセージを伝えていました。

3人目は、名古屋大学素粒子宇宙起源研究所(KMI)広報の南崎梓さんで「好き!で選んだ私の道」と題して講演しました。大学の物理学科卒業後、研究者から大学広報職への転身、さらに物理学者との結婚を機に渡米、渡米先での就職活動とカリフォルニア工科大学 IPAC 広報チームでの経験。さらに、日本帰国後の現在従事している名古屋大や国際共同実験Belle IIグループでの広報業務、数物系女子の進学に関する研究活動など、自らの興味から飛び込んでいった多岐にわたる活動を紹介しました。そして、物理学を学んだことが現在の仕事にどのように役立っているかだけではなく、海外で職を得る過程で培った自身の心構えや、結婚することで生じる夫婦のキャリアの問題を二体問題として紹介。そうした中でも様々な形でキャリアを築いていけることを自身の経験のみならず周囲の事例も交え学生に示しました。

最後に講演を行ったのは、千葉大学グローバルプロミネント研究基幹教授の石原安野さんで「ニュートリノで宇宙を探る日々、そこに至るまでの道」と題して講演しました。現在携わっている国際共同実験アイスキューブの概要と検出器拡張の将来計画についても説明。中でも、拡張計画に向けた新型光検出器の開発・製作の責任者として研究者をまとめる日々の奮闘も紹介しました。さらに、現在の立場に至る過程として、テキサス大学大学院への進学、その後のアメリカでの研究生活、長いポスドク期間を経たポジション取りの苦労なども話しました。しかし、そうした中でも、得意ではなかったが "物理を一番勉強したい" というモチベーションのもと物理学科を選択したことが、自身で良かったと思う選択の一つであったと振り返りました。そして、研究者のキャリアを築いていく上では、野心的な気持ちと執拗さに加え、知的好奇心の強さと楽観的であることも重要であると学生に伝え、講演を締め括りました。

講演の合間に行われた施設見学では参加者が3つの班に分かれ、Kavli IPMU と物性研究所、宇宙線研究所の3研究機関のうち2つの研究所を各班毎に見学しました。交流会では、お茶やお菓子を片手に和やかな雰囲気の中で、講師へ積極的に質問する姿や参加者同士での交流がみられました。最後に徳永将史物性研究所准教授の挨拶で締めくくられ、盛況のうちにイベントは終了しました。

参加者アンケートからは、「数少ない物理の女性がどのような進路に進んでいるのかがわかり、とても参考になった」「物理で生きていくことを不安に思うことが多かったので、もっと楽観的に考えてこうという気持ちがもてた」「進路選択や将来に悩んでいるので、心の支えになるような言葉や、講師の方々の経験が非常に参考になった」など、参加者からの前向きなコメントが数多く寄せられました。

交流会の様子
交流会の様子

参加者と講師、スタッフらの集合写真
参加者と講師、スタッフらの集合写真

施設見学の様子
施設見学の様子

「第4回 やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」の告知ページ

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