「(仮称)赤門脇トイレ」デザインコンペティションの実施概要と審査結果

実施概要
コロナ禍であったために全ての審査をオンラインで実施し、一次審査で選出された7組によるプレゼンテーションと質疑応答を含めた二次審査の結果、最優秀賞1点、優秀賞3点を選出しました。
本学としても前例のないデザインコンペティションの実施にご協力頂いた方々、テーマに向き合い作品を考案し、応募頂いた学生・研究員のみなさまに心から感謝の意を表します。
(募集要項等はhttps://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/events/z0506_00002.htmlを参照)
受賞者
木村 七音流(新領域創成科学研究科 修士課程1年)
齋藤 亘佑(法学部 4年)
川本 亮(医学部 4年)
優秀賞:『東京のトイレ、大学の屋根』
内倉 悠(学際情報学府 修士課程2年)
横山 隼也(工学系研究科 修士課程2年)
優秀賞:『UT Palimpsest-赤く重ね書きされた壁-』
Satavee Kijsanayotin(工学系研究科 修士課程2年)
廣野 智史(工学系研究科 修士課程1年)
優秀賞:『〈空き地〉の年輪』
小林 大輝(理学部 3年)
武田 麻鈴(文学部 3年)
菊池 凜(法学部 4年)
※優秀賞の順番は応募登録順
隈 研吾 審査委員長の講評

小さな公共トイレを入り口にして、これほどに深い世界にはいってゆけるとは、僕自身正直なところ全く予想していなかった。
「インクルーシブな社会の実現」が重要であるということについて、反論する人はいないであろう。しかし、その総論に賛成な人も、それが具体的にどんなトイレのプランニングになり、どんなデザインになるべきかと問われると、はたと考え込んでしまうだろう。それほどに、僕らは無意識にトイレを使い、無意識に様々な人たちをエクスクルード(排除)したり、差別したりして、毎日を過ごしているのである。建築に携わり建築を作っている人間が、実はその問題に対して最も無意識で、無知であったかもしれない。
審査していて、その事実をつきつけられ、僕自身にとっても貴重な体験をさせていただいた。
大学という場所は、専門家を育てる場所である以上に、専門家が傲慢と偏見に陥りやすいことを教えるべき場所でもある。今回のコンペは、小さなトイレを通じて、そのとても大事なことを発信できたように、僕は感じた。
審査委員
【委員】(五十音順)
秋田 喜代美:東京大学大学院教育学研究科 研究科長・教授(専門:授業研究、学校教育学)
加藤 耕一 :東京大学大学院工学系研究科 教授(専門:建築史、建築理論)、キャンパス計画室員
熊谷 晋一郎:東京大学先端科学技術研究センター 准教授 (専門:小児科学、当事者研究)、バリアフリー支援室長、キャンパス計画室員
清水 晶子 :東京大学大学院総合文化研究科 教授(専門:フェミニズム、クィア理論)
千葉 学 :東京大学大学院工学系研究科 教授(専門:建築意匠)、キャンパス計画室副室長
中井 祐 :東京大学大学院工学系研究科 教授(専門:土木デザイン、景観論)、キャンパス計画室副室長
経緯
2020年11月5日(金) | 第1回審査委員会 |
2020年11月13日(金) | 募集要項公表 |
2020年11月13日(金)~12月10日(木) | 応募登録期間 <応募登録数:121点> |
2021年1月5日(火)~11日(月) | 応募案提出期間 <応募数:63点> |
2021年1月15日(金) | 第2回審査委員会(一次審査) <一次審査選出:7点> |
2021年2月17日(水) | 第3回審査委員会(二次審査) <最優秀賞:1点 優秀賞:3点> |
対象敷地位置図

最優秀賞
「ひとのトイレ」
木村 七音流(新領域創成科学研究科 修士課程1年)
齋藤 亘佑(法学部 4年)
川本 亮(医学部 4年)
<講評>
一見単純な形の建築物に見えるが、多様な使用者にたいする綿密な配慮に基づいて、機能も形も異なる三つの便房を組み合わせるプランは、次代のパブリックトイレの一つの形を示した、優れて創造的でオリジナルな提案である。プレゼンテーションも傑出していた。
優秀賞
「東京のトイレ、大学の屋根」
内倉 悠(学際情報学府 修士課程2年)
横山 隼也(工学系研究科 修士課程2年)
<講評>
隣接するコミュニケーションセンターに向かって長く伸ばした軒のデザインは、敷地の特徴を捉え、周辺と調和させる秀逸なデザインだった。焼杉をルーバー状に並べた前廊下空間と、比較的ゆったりした2室のトイレ空間も、バランスのとれた構成である。
優秀賞
※応募登録番号順「UT Palimpsest-赤く重ね書きされた壁-」
Satavee Kijsanayotin(工学系研究科 修士課程2 年)
廣野 智史 (工学系研究科 修士課程1 年)
<講評>
蛇篭に煉瓦やタイルを詰め込んでいくというセルフビルド的な建設のプロセスによって、本郷キャンパスに流れる時間性をデザインに凝縮させようとした提案である。パブリックトイレとしての提案には少し難があるものの、その美しいイメージと物語性が魅力的な作品である。
優秀賞
※応募登録番号順「〈空き地〉の年輪」
小林 大輝(理学部 3年)
武田 麻鈴(文学部 3年)
菊池 凜(法学部 4年)
<講評>
歴史的な景観の特徴を拾い上げ、建物だけでなくむしろ周囲の空間を含めた公共トイレ空間の質を実現しようとする姿勢が好ましい提案。インクルーシブなトイレとしてのプランニングにも意識が行き届いており、トータルなバランスに優れた佳品である。
一次審査選定
「FLIP DOT TOILET」
Luciana Tenorio
(工学系研究科 博士課程2年)
Saul Trujillo
(新領域創成科学研究科 修士課程2年)
<講評>
裏面を鏡面にしたFLIP DOTを用い、トイレのファサードをインフォメーションボードにする野心的な提案である。日々の情報や周囲の風景を映し出して刻々と表情を変える姿は、赤門とコミュニケーションセンターの間という立地の新たな可能性を提示してくれている。
一次審査選定
※応募登録番号順中倉 徹紀(工学系研究科 博士課程2年)
<講評>
内田ゴシックの尖頭アーチを3次元に展開した有機的な空間に特徴のある提案である。本郷キャンパスの歴史性を、単なる記号としてではなく、空間にまで展開した点は秀逸であり、さらに構造や材料なども含めた緻密な設計は、極めて完成度が高い。
一次審査選定
※応募登録番号順「なじむ-当たり前のものとしてあるトイレ-」
合田 智揮(工学部 4年)
築島 綾音(文学部 4年)
<講評>
大学キャンパス内にある公共トイレとして、機能面だけでなく、景観上の見え方や視認のされ方にまで配慮した提案は高く評価できる。学内の他の場所で整備する場合にも応用可能な考え方のモデル的な作品と言える。
事務局連絡先
Eメール:jigyokikaku.adm@gs.mail.u-tokyo.ac.jp